【例題で学ぶ】ラプラス逆変換(非斉次線形微分方程式)


 前回はラプラス変換を用いた斉次線形微分方程式を扱った。 ここでは例題を通して非斉次の線形微分方程式を解いていく。 例題(1)は斉次、(2)(3)(4)は非斉次の微分方程式である。

例題

次の y(t) に関する微分方程式を解け。 ただし初期値は y(0)=y_0, y'(0)=v_0 とする。

    \begin{eqnarray*} &&(1)\quad y''(t)+9y(t)=0\\  &&(2)\quad y''(t)+9y(t)=5\cos t\\  &&(3)\quad y''(t)+9y(t)=5\cos 3t\\  &&(4)\quad y''(t)+4y'(t)+9y(t) = 5\cos 3t  \end{eqnarray*}





1. 基礎事項について

を使うため、 これらの内容が不十分であれば一度戻って復習しないといけない。


2. 例題の解答

 ラプラス変換による微分方程式の解法は、 まず微分方程式をラプラス変換するところから始める。

以下では、求める y(t) のラプラス変換を Y(s)={\mathcal L}[y(t)](s) とする。 初期値は y(0)=y_0, y'(0)=v_0 である。


例題(1)の解答

 (1)で表された斉次の線形微分方程式(単振動の運動方程式など)を解いていく。

【解答】

微分方程式の両辺をラプラス変換する。微分のラプラス変換を用いて、

    \begin{eqnarray*} &&s^2 Y(s) -sy_0 - v_0 + 9Y(s)=0\\\\  \Leftrightarrow\quad&& Y(s)=\frac{s}{s^2+9}y_0 +  \frac{\textcolor{blue}{3}}{s^2 + 9}\cdot\frac{v_0}{\textcolor{blue}{3}}\\\\  \therefore\quad&&y(t)={\mathcal L}^{-1}[Y(s)]=y_0\cos 3t + \frac{v_0}{3}\sin 3t  \quad\blacksquare  \end{eqnarray*}

となる。

 解を y(t)=A\cos(3t+\delta) と書けば、単振動を表すことがわかる(\delta は初期位相)。


例題(2)の解答

(2)は非斉次の線形微分方程式であり、(強制振動の運動方程式など)を表す。

【解答】

微分方程式の両辺をラプラス変換する。 微分のラプラス変換と \cos のラプラス変換を用いる。 このとき左辺は例題(1)と同様の形になる。

    \begin{eqnarray*} &&s^2 Y(s) -sy_0 - v_0 + 9Y(s) = \frac{5s}{s^2+1}\\\\  \Leftrightarrow\quad&&  Y(s)=\frac{s}{s^2+9}y_0+\frac{\textcolor{blue}{3}}{s^2+9}\cdot\frac{v_0}{\textcolor{blue}{3}}+  \textcolor{red}{\frac{5s}{(s^2+9)(s^2+1)}}  \end{eqnarray*}


ここで、第3項について部分分数分解

    \begin{eqnarray*} \textcolor{red}{\frac{5s}{(s^2+9)(s^2+1)}}  =\left(\frac{s}{s^2+1}-\frac{s}{s^2+9}\right)\cdot\frac{5}{8}  \end{eqnarray*}

を用いて、

    \begin{eqnarray*} Y(s)&=&\frac{s}{s^2+9}y_0+\frac{\textcolor{blue}{3}}{s^2+9}\cdot\frac{v_0}{\textcolor{blue}{3}}+\frac{5}{8}\cdot\frac{s}{s^2+1}-\frac{5}{8}\cdot\frac{s}{s^2+9}\\\\  &=&  \left(y_0-\frac{5}{8}\right)\cdot\frac{s}{s^2+9}+\frac{v_0}{3}\cdot\frac{3}{s^2+9}  +\frac{5}{8}\cdot\frac{s}{s^2+1}  \end{eqnarray*}

を得る。これをラプラス逆変換して微分方程式の解を得る。

    \begin{eqnarray*} y(t)&=&\left(y_0-\frac{5}{8}\right) \cos 3t  +\frac{v_0}{3}\sin 3t +\frac{5}{8}\cos t \quad\blacksquare\\\\  (\quad &=& y^{(1)}(t) + y_b(t) \quad)  \end{eqnarray*}


ここで、y^{(1)}(t) は例題(1)の解と同じ形の斉次解である (初期値を同じにしたため \cos の係数が異なる)。 y_b(t)=\frac{5}{8}\cos t は特殊解を表す。 非斉次微分方程式の一般解は、(斉次解)+(特殊解)の形になる。 例題(2)で初期値が与えられていない場合の一般解は、

    \begin{eqnarray*} y(t)=A\cos 3t + B\cos 3t + \frac{5}{8}\cos t \quad(A,B:\;const.)  \end{eqnarray*}

となる。


例題(3)の解答

 例題(2)と似ているがどうだろうか。

【解答】

微分方程式の両辺をラプラス変換する。

    \begin{eqnarray*} &&s^2 Y(s) -sy_0 - v_0 + 9Y(s) = \frac{5s}{s^2+9}\\\\  \Leftrightarrow\quad&&  Y(s)=\frac{s}{s^2+9}y_0+\frac{\textcolor{blue}{3}}{s^2+9}\cdot\frac{v_0}{\textcolor{blue}{3}}+\textcolor{red}{\frac{5s}{(s^2+9)^2}}  \end{eqnarray*}


ここで、第3項について部分分数分解する。 s^2+9=(s+3i)(s-3i) と因数分解して

    \begin{eqnarray*} \textcolor{red}{\frac{5s}{(s^2+9)^2}}  =\frac{a}{(s+3i)}+\frac{b}{(s+3i)^2}+\frac{c}{(s-3i)}+\frac{d}{(s-3i)^2}  \end{eqnarray*}

と置き、係数 a,b,c,d を求めると、



    \begin{eqnarray*} \begin{cases}  a=0\\  b=+\frac{5}{12}i\\  c=0\\  d=-\frac{5}{12}i  \end{cases}  \end{eqnarray*}

である。したがって、

    \begin{eqnarray*} \textcolor{red}{\frac{5s}{(s^2+9)^2}}  &=&\frac{5}{12}i\cdot\frac{1}{(s+3i)^2}-\frac{5}{12}i\cdot\frac{d}{(s-3i)^2}\\\\  &=&-\frac{5}{12}i\left(\frac{1}{(s-3i)^2}-\frac{1}{(s+3i)^2}\right)  \end{eqnarray*}


ここで「s移動」によるラプラス逆変換:

    \begin{eqnarray*} {\mathcal L}^{-1} \left[ \frac{1}{(s\pm 3i)^2}\right]  =te^{\mp 3it}  \end{eqnarray*}

を用いて、

    \begin{eqnarray*} {\mathcal L}^{-1} \left[ \frac{5s}{(s^2+9)^2}\right]  &=&-\frac{5}{12}i\cdot t\left(e^{3it}-e^{-3it}\right)\\\\  &=&-\frac{5}{12}i\cdot t\cdot 2i\sin 3t\\\\  &=&+\frac{5}{6}t\sin 3t  \end{eqnarray*}


したがって、

    \begin{eqnarray*} Y(s)=\frac{s}{s^2+9}y_0+\frac{3}{s^2+9}\cdot \frac{v_0}{3}  +\frac{5s}{(s^2+9)^2}  \end{eqnarray*}

をラプラス逆変換して微分方程式の解を得る。

    \begin{eqnarray*} y(t)=y_0\cos 3t + \frac{v_0}{3}\sin 3t  +\frac{5}{6}t\sin 3t\quad\blacksquare  \end{eqnarray*}

※解は t が大きくなると第三項により振動の振幅が増幅する。 もともとの微分方程式の左辺は単振動の運動方程式であり、 右辺を時間 t で振動する外力とみると、 外力の振動数と元の単振動の振動数が一致している。 これは「共鳴」であり、振幅が増幅していることに対応する。



例題(4)の解答

【解答】

微分方程式の両辺をラプラス変換する

    \begin{eqnarray*} &&s^2Y(s)-sy_0 -v_0 + 4\left\{  sY(s)-y_0  \right\}+9Y(s)=\frac{5s}{s^2+9}\\\\  \Leftrightarrow \quad &&  (s^2+4s+9)Y(s)=sy_0 + v_0 + 4y_0 +\frac{5s}{s^2+9}\\\\  \Leftrightarrow \quad &&  Y(s)=\frac{sy_0+v_0+4y_0}{s^2+4s+9}+\frac{5s}{(s^2+4s+9)(s^2+9)}  \end{eqnarray*}


第一項について:

    \begin{eqnarray*} s^2+4s+9=(s+2)^2 + \sqrt{5}^2  \end{eqnarray*}

を利用して

    \begin{eqnarray*} \frac{sy_0+v_0+4y_0}{s^2+4s+9}  &=&  \frac{sy_0+v_0+4y_0}{(s+2)^2+\sqrt{5}}\\\\  &=&  \frac{\textcolor{red}{(s+2)y_0-2y_0}+v_0+4y_0}{(s+2)^2+\sqrt{5}}\\\\  &=&  \frac{s+2}{(s+2)^2+\sqrt{5}}  +\frac{\textcolor{blue}{\sqrt{5}}}{(s+2)^2+\sqrt{5}}\cdot\frac{v_0 + 2y_0}{\textcolor{blue}{\sqrt{5}}}  \end{eqnarray*}


第二項について:

    \begin{eqnarray*} \frac{5s}{(s^2+4s+9)(s^2+9)}  &=&\left(\frac{1}{s^2+9}-\frac{1}{s^2+4s+9}\right)\cdot\frac{5}{4}\\\\  &=&\frac{5}{4\cdot\textcolor{blue}{3}}\cdot\frac{\textcolor{blue}{3}}{s^2+9}  -\frac{5}{4\cdot \textcolor{blue}{\sqrt{5}}}\cdot  \frac{\textcolor{blue}{\sqrt{5}}}{(s+2)^2+\sqrt{5}^2}\\\\  &=&  \frac{5}{12}\cdot\frac{3}{s^2+9}-\frac{\sqrt{5}}{4}\cdot\frac{\sqrt{5}}{(s+2)^2+\sqrt{5}^2}  \end{eqnarray*}



したがって、

    \begin{eqnarray*} Y(s)=  \frac{s+2}{(s+2)^2+\sqrt{5}}  +\left(\frac{v_0 + 2y_0}{\sqrt{5}}-\frac{\sqrt{5}}{4}\right)  \cdot\frac{\sqrt{5}}{(s+2)^2+\sqrt{5}}+\frac{5}{12}\cdot\frac{3}{s^2+9}  \end{eqnarray*}


s移動」および \sin,\cos のラプラス逆変換により

    \begin{eqnarray*} y(t)=y_0 e^{-2t}\cos\sqrt{5}t  +\left(\frac{v_0 + 2y_0}{\sqrt{5}}-\frac{\sqrt{5}}{4}\right)e^{-2t}\sin\sqrt{5}t  +\frac{5}{12}\sin 3t\quad\blacksquare  \end{eqnarray*}


*第一項と第二項は Ae^{-2t}\cos(\sqrt{5}t+\delta) の形の減衰振動を表す。 第三項は強制振動による振動運動を表している。


まとめ

 ここでは非斉次の微分方程式をラプラス変換により解いてきた。 方程式の形として単振動や強制振動の形を扱った。ラプラス変換の応用として微分方程式を解いてきたが、本例題はよくある方法でも解くことができる。




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