【微分方程式】例題で学ぶ:リカッチ(リカティ)型の解法


 リカッチ(リカティ、Riccati)の微分方程式は

    \begin{eqnarray*} y'=P(x)+Q(x)y+R(x)y^2 \end{eqnarray*}

の形をしている。一般的には解けないが、 1つの特解 y_1 がわかっているときは y=z+y_1 とおくことでベルヌーイの微分方程式に帰着して解ける。ベルヌーイ型は線形型に帰着するため

リカッチ型 → ベルヌーイ型 → 線形型

のようにより簡単な微分方程式に帰着させて解く。 ここでは例題を通して、リカッチ型の解法を習得しよう。

例題:リカッチの微分方程式

以下のリカッチの微分方程式の特解を見つけて解こう。

    \begin{eqnarray*} &&(1)\quad y'+y^2-5y+6=0\\ &&(2)\quad xy'=2x+x^2-(2x+1)y+y^2 \end{eqnarray*}


1. リカッチの微分方程式の解き方

 特殊なタイプの微分方程式は、「解けるタイプの微分方程式」に帰着させて解く。リカッチ型はベルヌーイ型に帰着される。


ベルヌーイの微分方程式とは?

 もしベルヌーイ型の微分方程式の形とその解法がわからなければ、先にそちらを習得するべきである。ここでは簡単に、ベルヌーイ型の微分方程式をまとめておく。


簡単な復習

ベルヌーイ型:

    \begin{eqnarray*} y'+P(x)y=R(x)y^{\textcolor{red}{n}} \end{eqnarray*}


z=y^{1-n} により以下の「線形型」に帰着する。

線形型:

    \begin{eqnarray*} y'+\tilde{P}(x)y=\tilde{Q}(x) \end{eqnarray*}


ベルヌーイ型に帰着することを確認

リカッチの微分方程式

    \begin{eqnarray*} y'=P(x)+Q(x)y+R(x)y^2 \end{eqnarray*}

の特解の一つを y_1 とする。つまり、

    \begin{eqnarray*} \textcolor{blue}{y_1'=P(x)+Q(x)y_1+R(x)y_1^2} \quad\cdots (*) \end{eqnarray*}

である。


リカッチ型の解の形を \textcolor{red}{y=z+y_1} と置く。 y'=z'+y_1' より微分方程式は、

    \begin{eqnarray*} z'+\textcolor{blue}{y_1'}&=&P(x)+Q(x)(\textcolor{red}{z+y_1})+R(x)(\textcolor{red}{z+y_1})^2\\\\ &=&\textcolor{blue}{P(x)+Q(x)y_1+R(x)y_1^2}\\ &&\quad\quad +Q(x)z+R(x)(z^2+2y_1 z) \end{eqnarray*}

(*)より、青色の部分は消えるため、

    \begin{eqnarray*} z'&=&\bigl( Q(x)+2y_1 R(x) \bigr)z+R(x)z^2\\\\ z'-\bigl(Q(x)+2y_1 R(x) \bigr)z&=&R(x)z^{\textcolor{red}{2}}\quad \cdots (*)' \end{eqnarray*}

となる。これは、z に関するベルヌーイ型の微分方程式である。 確かにリカッチ型はベルヌーイ型に帰着する。


リカッチの微分方程式の一般解

 上のベルヌーイ型を解く。

    \begin{eqnarray*} u&=&z^{1-\textcolor{red}{2}}=z^{-1}\\\\ u'&=&-z^{-2}\cdot z' \end{eqnarray*}

より、ベルヌーイ型(*)’の両辺に -z^{-2} をかける。

    \begin{eqnarray*} &&-z^{-2}\cdot z'+\bigl(Q(x)+2y_1 R(x)\bigr)z^{-2}\cdot z=R(x)z^{-2}\cdot z^2\\\\ \Leftrightarrow && \quad u'+\bigr(Q(x)+2y_1 R(x)\bigr)u=R(x) \end{eqnarray*}

となり、線形型に帰着する。


したがって、両辺に

    \begin{eqnarray*} e^{\int(Q(x)+2y_1 R(x))\,dx} \end{eqnarray*}

をかけて、

    \begin{eqnarray*} \frac{d}{dx}\left(e^{\int(Q(x)+2y_1 R(x))\,dx} u\right) =\int R(x)e^{\int(Q(x)+2y_1 R(x))\,dx} \end{eqnarray*}


    \begin{eqnarray*} \therefore u=e^{-\int(Q(x)+2y_1 R(x))\,dx} \left\{\int R(x)e^{\int(Q(x)+2y_1 R(x))\,dx}\,dx + C\right\} \end{eqnarray*}


以上より、

    \begin{eqnarray*} z=u^{-1}=\frac{e^{\int(Q(x)+2y_1 R(x))\,dx}}{\left\{R(x)e^{\int(Q(x)+2y_1 R(x))\,dx}\,dx + C\right\}} \end{eqnarray*}

したがって、リカッチ型の一般解は

    \begin{eqnarray*} y=y_1+\frac{e^{\int(Q(x)+2y_1 R(x))\,dx}}{\left\{\int R(x)e^{\int(Q(x)+2y_1 R(x))\,dx}\,dx + C\right\}} \end{eqnarray*}

である。当たり前だが、これは覚える式ではない


解き方の流れまとめ

リカッチ型を解くための前提は

  • 特解が見つけられる
  • ベルヌーイ型が解ける
  • 線形型が解ける(ベルヌーイ型は線形型に帰着するため)

リカッチの微分方程式まとめ


リカッチの微分方程式

    \begin{eqnarray*} y'=P(x)+Q(x)y+R(x)y^2 \end{eqnarray*}

は特解 y_1 が分かれば、以下の流れで解くことができる。

  1. 特解 y_1 を見つける
  2. 解を y=z+y_1 とおくと z に関してベルヌーイの微分方程式になる
  3. u=z^{-1} とおいて線形型に帰着させる(ベルヌーイの微分方程式の解法
  4. 線形型を解いて u を求める(1次線形型微分方程式の解法
  5. u\to z \to y と変数を戻す


2. 例題の解答

 以下の解答で、C,C_1 は定数である。 (1)は変数分離型でも解ける。

例題(1)の解答

 特解を探す:

    \begin{eqnarray*} y'+y^2-5y+6=0 \end{eqnarray*}

の特解の一つは

    \begin{eqnarray*} y_1=2 \end{eqnarray*}

である。


\textcolor{red}{y=2+z} と置く:

    \begin{eqnarray*} y'=z' \end{eqnarray*}

より

    \begin{eqnarray*} &&z'+(2+z)^2-5(z+2)+6=0\\\\ &&\quad \Leftrightarrow \quad z'-z=-z^{\textcolor{red}{2}}\quad\cdots (*) \end{eqnarray*}

のベルヌーイ型(あるいは変数分離型)。 ここでは練習のため、ベルヌーイ型として解く。


u=z^{1-\textcolor{red}{2}}=z^{-1} と置く:

    \begin{eqnarray*} u'=-z^{-2}\cdot z' \end{eqnarray*}

より、(*)の両辺に -z^{-2} をかけて

    \begin{eqnarray*} -z^{-2}z'+z^{-1}&=&1\\\\ u'+u&=&1 \end{eqnarray*}

の線形型(あるいは変数分離型)になる。


両辺にかけるもの:

    \begin{eqnarray*} e^{\int \,dx}=Ce^{x}\quad\Rightarrow \quad e^{x} \end{eqnarray*}


両辺に e^{x} をかける:

    \begin{eqnarray*} &&e^{x} u'+e^{x} u=e^{x}\\\\ \Leftrightarrow \quad&& \frac{d}{dx}\left[e^{x} u\right]= e^{x}\\\\ \Leftrightarrow \quad&& e^{x}u=\int e^{x}\,dx=e^{x}+C\\\\ \Leftrightarrow \quad&& u=1+Ce^{-x} \end{eqnarray*}


u\to z\to y

    \begin{eqnarray*} y=2+z&=&2+u^{-1}\\ &=& 2+\frac{1}{1+C e^{-x}}\quad\blacksquare \end{eqnarray*}


*答え方は定数項 C の取り方で変わる。 以下のような形でもよい。

    \begin{eqnarray*} y=\frac{3+2Ce^{-x}}{1+Ce^{-x}}\quad\blacksquare \end{eqnarray*}



例題(2)の解答

    \begin{eqnarray*} xy'&=&2x+x^2-(2x+1)y+y^2\\\\ y'&=&2+x-\frac{2x+1}{x}y+\frac{1}{x}y^2 \end{eqnarray*}

はリカッチ型で、特解の一つは y_1=x である。 つまり、

    \begin{eqnarray*} \textcolor{blue}{x'=1=2+x-\frac{2x+1}{x}\,x+\frac{1}{x}\,x^2} \end{eqnarray*}

が成り立つ。


\textcolor{red}{y=z+x} と置く:

    \begin{eqnarray*} y'=z'+1 \end{eqnarray*}

より

    \begin{eqnarray*} z'+1&=&2+x-\frac{2x+1}{x}(z+x)+\frac{1}{x}(z+x)^2\\\\ \Leftrightarrow \quad z'+\cancel{\textcolor{blue}{1}} &=&\cancel{\textcolor{blue}{2+x-(2x+1)+x}}\\ &&\quad\quad-\frac{2x+1}{x}z+2z+\frac{1}{x}z^2 \end{eqnarray*}

したがって、

    \begin{eqnarray*} z'+\frac{1}{x}z=\frac{1}{x}z^2 \end{eqnarray*}

のベルヌーイ型に帰着する。


u=z^{1-\textcolor{red}{2}}=z^{-1} と置く:

    \begin{eqnarray*} u'=-z^{-2}\,z' \end{eqnarray*}

より、ベルヌーイ型の両辺に -z^{-2} をかけて

    \begin{eqnarray*} -z^{-2}\,z'-\frac{1}{x}z^{-1}&=&-\frac{1}{x}\\\\ u'-\frac{1}{x}u&=&-\frac{1}{x} \end{eqnarray*}

の線形型に帰着する。


両辺にかけるもの:

    \begin{eqnarray*} e^{\int -\frac{dx}{x}}=e^{-\log|x|+C}\quad\Rightarrow \quad \frac{1}{x} \end{eqnarray*}


線形型の両辺に \frac{1}{x} をかける:

    \begin{eqnarray*} \frac{1}{x}u'-\frac{1}{x^2}u=-\frac{1}{x^2}\\\\ \Leftrightarrow \quad&& \frac{d}{dx}\left(\frac{u}{x}\right)=-\frac{1}{x^2}\\\\ \Leftrightarrow \quad&& \frac{u}{x}=-\int \frac{dx}{x^2}=\frac{1}{x}+C \end{eqnarray*}

したがって

    \begin{eqnarray*} u=Cx+1 \end{eqnarray*}


u\to z\to y

    \begin{eqnarray*} y=x+z&=&x+u^{-1} \\\\ &=&x+\frac{1}{Cx+1}\\\\ &=&\frac{Cx^2+x+1}{Cx+1}\quad\blacksquare \end{eqnarray*}



3. まとめ

 リカッチの微分方程式の解き方を学んだ。特解を見つけてから

リカッチ型 → ベルヌーイ型 → 線形型

と帰着させることで解けることがわかった。 ポイントである、\textcolor{red}{y=y_1+z} の置き方だけ覚えておけば良いだろう。




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