例題を使ってラプラス逆変換でよく使う「移動」について説明する。ここでは などのラプラス逆変換については理解しているものとして進めていく。 移動とは以下のような逆変換のことである。
式だけではわかりにくいので以下の例題を使って説明する。特に問題(4)(5)は間違えやすいので注意する。
次のに関する関数をラプラス逆変換せよ。
目次
1. s移動について
まず、 移動がどこからきたか思い出そう。
exp(at) と t exp(at) のラプラス変換
とをラプラス変換せよ。
【解答】
また、
によって、 となると考えられる。このことを、一般の について確かめる。
一般の f(t) と s移動
一般に、ラプラス変換後の に対して とすると
である。これが「移動」である。
s移動の使い方
に対して、元の に を掛けておけばよい。つまり、
2. 【解答】
例題(1)(2)の解答/s移動の基本
移動を使って例題の(1)(2)を解く手順はカンタンである。 表記を簡単にするため、ラプラス変換・逆変換を「⇒」により表す。
に対して として
例題(3)の解答/部分分数分解してs移動
方針:部分分数分解する。
例題(4)(5)の解答/間違えやすいポイント
のラプラス変換は、
※ がどちらか覚えられない方:参考:ラプラス変換表と証明まとめ
さて、この例題は自分がよく間違えていた問題である(戒め)。
【間違った解答】
(4)は のラプラス変換の式が間違っている。(5)では「移動」がうまくできていない。
【正しい解答】
例題(4)の方針:を分子につくる!
例題(5)の方針:の形をつくる!
結局、
に対して、
となる。
3. まとめ
ラプラス逆変換するときには、この「 移動」が使えるかどうかを考えるのがよいでしょう。ここではその例題と間違えやすいポイントをまとめました。ここで学んだ「s移動」とラプラス逆変換を習得すれば、微分方程式の初期値問題にも対応できる。