全微分型の微分方程式を解く。全微分型とは
の形をしている。これは が分かれば簡単に解ける。 つまり、一般解は
である。問題は「いかにして を求めるか」である。例題を解いて見ていこう。 ここでは正攻法により求める。(参考:ずるい完全微分型の解法)
以下の微分方程式を解け。
目次
1. 全微分型の微分方程式
全微分型の微分方程式の説明をおこない、その後解き方を解説する。
全微分型とは何か
全微分型が何かわからないと解き方を覚えていても仕方ないので、全微分型の形を示す。
例題を見るとわかる通り、実際は以下の形が全微分型であることを見分けないといけない。
この左辺が、何かの全微分になっていれば、(*)と一致する。すなわち、与えられた問題が全微分型であれば、
である。以下では(*)’が の全微分になるための条件を説明する。
全微分型の条件
与えられた
がある関数の全微分であるための必要十分条件は
が成立することである。
初めの3つの例題の左辺
については、確かに上の必要十分条件を満たすことが確認できる。 全微分型になっているかどうかをチェックした後で、以下の解法を用いて微分方程式を解く流れである。
全微分型の解き方(簡単な例)
1変数関数 の場合
であった。したがって、2変数関数 の場合
は簡単にわかる。
いくつかの例を見ていく。
大丈夫だろうか。 結局、 を求めることができれば、微分方程式が解けたも同然である。
f(x,y)を求める
が全微分型であることを確認した後で、 を求める。 を求めるということを常に頭に置いて、下の求め方を見ていくのがよい(そうでないと迷子になる)。
【の求め方】
(*)’式の左辺が の全微分であるため、
である。
上の式に対して、両辺を で積分する。
ここで、 は を含まない関数である(1変数のときの積分定数に対応)。 (*)”の下より、この を で偏微分すれば、 になる。
右辺の は既知であるため、両辺を で積分して を求めることができる。
以上より、
として、 が求められる。したがって、微分方程式の一般解は
となる。
解法まとめ
全微分型微分方程式
の解き方は以下の通りである。
- 全微分型であること、以下の条件より確かめる
- を、 を で積分した関数と で表す
- 上の を で微分したものが になる
- 上の式を で積分して、 を求める
- が求められ、下の式が微分方程式の一般解となる
具体的に例題を解いていったほうが、圧倒的にわかりやすい。
2. 例題の解答
以下の解答で、 などは定数である。
例題(1)の解答
について
とおく。
全微分型をチェック:
より全微分型。
微分方程式の左辺が の全微分とする:
この を求めたい
から求めていく:
を で偏微分したものが :
がわかる:
一般解:
* から求めていったが、 から
を で積分して、 を求めることもできる。
例題(2)の解答
全微分型をチェック:
とおく。
確かに全微分であるための必要十分条件を満たす。
微分方程式の左辺が の全微分とする:
この を求めたい
から求めていく:
を で偏微分したものが :
よって、
がわかり、一般解がわかる:
例題(3)の解答
全微分型をチェック:
とおく。
より、確かに全微分であるための必要十分条件を満たす。
微分方程式の左辺が の全微分とする:
この を求めたい
から求めていく:
を で偏微分したものが :
したがって、
がわかり、一般解がわかる:
3. まとめ
全微分型の微分方程式はいかがだっただろうか。 このタイプは、具体的な例題を解いていくと自然に解き方が身につくと思う。 ただし、全微分になっているかどうかのチェックは忘れずに。