【例題で学ぶ①】ローラン展開/わかりやすい基本と例題/テイラー展開との違い


 ローラン展開例題シリーズその1。ローラン展開の基本を簡単な例題で学ぶ。ここで扱うのは初歩的な話と初歩的な例題である。厳密な説明、発展的な例題は教科書に載っているだろう。

ローラン展開の例題

次の関数 f(z) を与えられた点の周りでローラン展開せよ。

(1) f(z)=\frac{1}{z} \;(z=0)

(2) f(z)=\frac{1}{z(z+1)} \;(z=0)

(3) f(z)=\frac{z}{(z+1)(z+2)}\;(z=-1)




1. ローラン級数展開の定義

 複素平面内の領域 K で関数 f(z) が、点 a を除いて正則であるときに次のようにローラン展開できる。

ローラン展開

    \begin{eqnarray*}f(z)&=&\cdots + \frac{A_{-2}}{(z-a)^2}+\frac{A_{-1}}{(z-a)^1}\\&+&A_0 + A_1(z-a) + A_2(z-a)^2 + \cdots \\ \\ &=&\sum_{n=-\infty}^{n=+\infty} A_n(z-a)^n \end{eqnarray*}

ここで展開係数 A_n は、

    \begin{eqnarray*} A_n=\frac{1}{2\pi i}\oint_{C} \frac{f(z)}{(z-a)^{n+1}}\, dz \end{eqnarray*}

である。Ca 含む閉曲線(領域 K 内)。

 実際、このまじめな式はあまり使わない(特に定期試験や院試などで)。


2. ローラン級数展開の概要

いつローラン展開?

 ローラン展開は複素関数の特異点周りで展開する。特に複素積分を行う場合に有用である。一般に f(z) の形が複雑だったりすると、

    \begin{eqnarray*} f(z)=\sum_{n=-\infty}^{n=+\infty} A_n(z-a)^n \end{eqnarray*}

にしておくと、f(z) がわかりやすい。


なぜローラン展開?

 テイラー展開と同様に、簡単な形に展開しておくと微分・積分が実行しやすくなる。とくに、複素積分は応用の上でも重要である。ここでは、ローラン展開による恩恵を少し書いておきたい。

下のような計算があったことを思い出そう。

    \begin{eqnarray*} \oint_C \frac{dz}{z-a} = 2\pi i \end{eqnarray*}

なんとなく

    \begin{eqnarray*} f(z)=\sum_{n=-\infty}^{n=+\infty} A_n(z-a)^n \end{eqnarray*}

のように展開すると f(z) の中に \frac{A_{-1}}{z-a} があって、積分の見通しがよくなる気がしないだろうか。例えば、

    \begin{eqnarray*} \oint_C \frac{A_{-1}}{z-a} \,dz = 2\pi i A_{-1} \end{eqnarray*}

のようになる。さらに、ここで A_{-1} が出てきたのは留数定理のように見える。

※ 実際にA_{-1} は孤立特異点 z=a の留数である。ローラン展開と留数定理の話については留数定理のところで扱いたい。(参考:例題で学ぶ:ローラン展開/極/留数定理(読了目安:15~30分))



ローラン展開とテイラー展開の違い

 ざっくり違いを説明する。下は2変数の実関数 f(x,y) を表す。

原点で特異的な2変数関数 f(x,y)

 図は実関数であるが、イメージとして似ている。テイラー展開は特異点でない(x,y)\neq(0,0) 周りで展開する。例えば、(x,y)=(5,5) 周りとかで。


ローラン展開とテイラー展開の大まかな違い


  • ローラン展開:ある特異点 z=a 周りで展開
  • テイラー展開:ある正則な点 周りで展開


 例えば、複素関数のテイラー展開は

    \begin{eqnarray*} f(z)=f(a) + f'(a)(z-a)+\frac{1}{2!}f''(a)(z-a)^2  + \cdots  \end{eqnarray*}

もし右辺に、\frac{1}{(z-a)^2} などの分母に z-a の形を含む項があれば、ローラン展開のように z=a で特異点になっているはずである。

 z=a とすれば左辺の f(a) は正則であるため、そのような項はでないはず。

一方ローラン展開は z=a が孤立特異点である。

    \begin{eqnarray*} f(z)&=&\cdots + \frac{A_{-2}}{(z-a)^2}+\frac{A_{-1}}{(z-a)^1}\\&+&A_0 + A_1(z-a) + A_2(z-a)^2 + \cdots \end{eqnarray*}

とすると、z=a について左辺も右辺も特異的である。



2. 例題の解答

 まじめな式はあまり使わない。ここでは級数を利用したローラン展開を示す。

(1) の解答

\frac{1}{z}z=0 周りのローラン展開:

 すでに f(z)z=0 周りでローラン展開されている。つまり、A_{-1}=1 で残りの展開係数 A_{n}=0\,(n\neq -1)

    \begin{eqnarray*} f(z)=\frac{1}{z} \quad \blacksquare \end{eqnarray*}


(2) の解答

\frac{1}{z(z+1)}z=0 周りのローラン展開:

 ローラン展開する。コツは \frac{1}{z} は素材のままで。

    \begin{eqnarray*} \frac{1}{z(z+1)}&=&\textcolor{red}{\frac{1}{z}\cdot\frac{1}{z+1}} \\ \\ &=& \frac{1}{z} \left[1-z+z^2-z^3+\cdots \right] \\ \\ &=& \frac{1}{z}-1+z-z^2+\cdots \quad \blacksquare \end{eqnarray*}

ここで、z\sim 0 における級数展開:

    \begin{eqnarray*} \frac{1}{1+z}=1-z+z^2-z^3+\cdots \end{eqnarray*}

を用いた。

 最後の答えは、f(z)=\frac{1}{z}-\sum_{n=0} (-1)^n z^n などで答えても良い。



(3) の解答

f(z)=\frac{z}{(z+1)(z+2)}(z=-1) 周りのローラン展開:

\frac{1}{z+1} が素材である。基本的に (z+1) の形を作るように変形する。

    \begin{eqnarray*} \frac{z}{(z+1)(z+2)} &=& \frac{1}{z+1}\cdot\frac{z}{z+2}\\\\ &=& \frac{1}{z+1}\left[\frac{\textcolor{red}{(z+1)}-1}{\textcolor{red}{(z+1)}+1}\right]\\\\ &=& \frac{1}{z+1}\left[(z+1)-1\right]\left[ 1-(1+z)+(1+z)^2-(1+z)^3+\cdots\right]\\\\ &=& \frac{1}{z+1}\left[-1+2(z+1)-2(z+1)^2+2(z+1)^3-\cdots\right] \\ \\ &=& -\frac{1}{z+1}+2-2(z+1)+2(z+1)^2-\cdots \quad \blacksquare \end{eqnarray*}

 初めのうちは、u=0 周りのローラン展開になるように u=z+1 などと置いて変形したほうがわかりやすいかもしれない。



3. まとめ

 例題を通して、簡単なローラン展開を説明した。基本的にテストや院試で出題されるローラン展開の問題は級数展開を用いるのが良い。

 ローラン展開の活躍の場は留数定理である。基本に慣れたら次は三角関数である。下の「ローラン展開例題シリーズその2」へ続く。





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