ゾンマーフェルト展開 (Sommerfeld expansion)は
で表される。ここで、 はフェルミ分布関数
である。この展開を用いることで、有限温度における物性値を評価することができる。
たとえば、 とすれば有限温度における電子の内部エネルギーを計算できる。
* 積分区間の下限は でなく0になっているときもある(このとき、 のかわりに、 とする)。
ゾンマーフェルト展開の導出
導出はおもに微分・積分計算であるため、難しくはない。最後だけ難しい積分が出てくる。
関数を定義する
以下の計算に必要な関数を定義する。
は扱いやすい関数とする。つまり、微分可能で となり、無限大で発散しないような関数を扱う (積分の下限が でなく 0 のときは、 とする)。
このような関数に対しては部分積分で積分を実行しやすくなる。また、フェルミ分布関数 については、, であることを思い出しておこう。
また、微分すると になる関数 を定義する
ここで、 になっている。
部分積分をおこなう
部分積分を実行していこう。
関数 は で発散しない関数であるため、第一項は0になっている。
テイラー展開する
式(1)を計算するために、 を 周りで展開する。
この結果を式(1)へ代入すると、
フェルミエネルギー はエネルギーに依存しないため、青色の項はエネルギー積分の外に出すことができる。 ( などは をエネルギーで微分した関数に対して、 を代入するため、これも積分の外に出せる。)
第一項:
第二項以下(級数で表す):
最後に示すようにフェルミ分布関数 の一階微分は に対して偶関数である。 したがって、エネルギー積分内の被積分関数
は、 に対して、 が奇数のときに奇関数、 が偶数のとき偶関数 になる。 したがって、 の積分では偶関数の場合 ( が偶数) のみ積分が0ではない。
これより、 に置き換えておく。
具体的に積分値を与える
エネルギー積分の部分を与える。まず、 に具体的な形(「フェルミ分布関数の微分」の章を参考)を代入する。
積分変数を以下のように置き換える。
これより、積分は
となる。 の具体的な積分の値は
この結果と式(3)を用いて、式(2)を計算していく。
これが式(*)の第二項以下になる。したがって、第一項の と合わせてゾンマーフェルト展開を得る。
ゾンマーフェルト展開は以下で与えられる。
ここで、
フェルミ分布関数の微分
途中で用いたフェルミ分布関数 の微分は容易に実行できる。