X線回折は固体物理で重要な役割を果たす。ここでは、ディフラクトメータによるX線回折の解析の基礎を説明する。ディフラクトメータでは でスキャンしていき、Braggの回折条件を満たす角度のときに回折によるピークが確認できる(下図)。
このピークから何が得られるかを解説していく。面心立方格子(FCC)や体心立方格子(BCC)などの立方晶系の面間隔の式は簡単であるので、立方晶系を例にとって解説する。
1. X線回折
X線は波である。したがって、2つの波があれば強め合ったり弱めあったりするように、X線も強め合うことがある。どのような条件で結晶に入射したX線が強め合うかを調べるために、Braggの式が必要である。
1.1 Braggの式
X線が結晶で回折する条件はBraggの式で与えられる。





ディフラクトメータでは を小さい値から大きい値まで変えていく。Braggの式を満たすある
面のときにX線が回折する。
入射するX線の波長 は、例えば、特性X線のCu
を使うときは、1.5418 Åである。当たり前だが、実験では何のX線を使っているか知っておく必要がある。
1.2 立方晶系の面間隔の式
立方晶系は対称性が良いので、面間隔の式は簡単な形になる。

今回、解析で使う関係式は以下の2つの式である。
(1) Braggの式
(2) 面間隔の式
2. 解析してみる
を解析してみよう。式(1)(2)を使う上で、まず既知の値と未知の値をはっきりさせておく。
既知:入射X線の波長
既知:各ピークの の値
未知:それぞれのピークの面指数
未知:格子定数
2.1 Braggの式を変形する
求めたい面間隔に注目してBraggの式(1)を変形する。


簡単のため から角度を大きくしていく場合を考える。
が大きくなると、左辺の面間隔はだんだん小さくなっていく。これから重要な帰結を得る。
0 [rad]から角度を大きくしていくとき、面間隔の最も大きい面が最初に回折する。
そしてここで、面間隔の式(2)を見て欲しい。 は格子定数で変わらない値なので、「面間隔の最も大きい面」は
が最も小さい面である。
消滅則がないBCCの場合は、 面である。消滅則のあるFCCの場合は
である。
0 [rad]から角度を大きくしていくとき、が最小になる
面が最初に回折する。
2.2 面指数を求めてみる
上記の事項から、単純立法格子の場合を考えてみる。単純立法格子では消滅則はないので、とりうる面指数 に制約はない。
の面指数を決定する。それぞれの記号については、以下の通り設定する。
:
のBragg角で回折がおこる面の面指数
:
のBragg角で回折がおこる面の面指数
:
のBragg角で回折がおこる面の面指数
:面指数
の面における面間隔
:面指数
の面における面間隔
:面指数
の面における面間隔
単純立法格子(消滅則のない)のとき を小さい順に10個書くと。
に対応
に対応
に対応
に対応
に対応
に対応
に対応
に対応
に対応
に対応
(1)Braggの式と(2)面間隔の式から を消去して、


2.3 格子定数を計算する
Braggの式から、
3. まとめ
ピークから面指数を求めて、格子定数を求めた。X線回折の基本的な計算なので習得しておくべきである。
(222)はh^2+k^2+l^2=8にはならないのでは?
すみません、(220)の間違いです。どうもありがとうございます。