【行列式】det(A O C D)=det(A B O D)=det(A)det(B)の証明


An 次正方行列、Dm 次正方行列のとき、

零行列 O があるときの行列式

    \begin{eqnarray*}{\rm det}\left(\begin{array}{cc}A & B\\ O & D\end{array}\right)=\left(\begin{array}{cc}A & O\\ C & D\end{array}\right)={\rm det}(A){\rm det}(D)\end{eqnarray*}

が成立することの証明です。




1. n次正方行列の行列式

各種記号については、参考:置換σを用いた行列式の定義を参照されたし。

定義:
n 次正方行列 A の行列式 det(A) は、

    \begin{eqnarray*}{\rm det}(A) = \sum_{\sigma \in S_n} {\rm sgn}(\sigma)a_{1\sigma(1)}a_{2\sigma(2)}a_{3\sigma(3)}\cdots a_{n\sigma(n)}\quad \cdots (*)\end{eqnarray*}

である。

2. det(A B O D)=det(A)det(D)

 置換の扱いに慣れていないと難しいかもしれない。

2.1 証明

【証明】 An 次正方行列、Dm 次正方行列であるため、p=n+m 次正方行列を X とする。

    \begin{eqnarray*}X=\left[ \begin{array}{cc}A & O \\ C & D \end{array} \right]=[x_{ij}]\end{eqnarray*}

と置く。{\rm det(X)} は 行列式の定義(*)より、

    \begin{eqnarray*}{\rm det}(X)= \sum_{\sigma \in S_n} {\rm sgn}(\sigma)x_{1\sigma(1)}x_{2\sigma(2)}\cdots x_{p\sigma(p)}\quad \cdots (*)\end{eqnarray*}

零行列 O の部分に注目すると、以下の条件を両方満たす要素 x_{ij} は0である(すなわち零行列 O にある要素)。

    \begin{eqnarray*}1\leq i \leq n \quad \cdots (1)\\n+1\leq j \leq p \quad \cdots (2)\end{eqnarray*}

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行列式の定義式(*)のx_{1\sigma(1)} x_{2\sigma(2)}\cdots x_{n\sigma(n)}の、条件(1)を満たす項に注目する。

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ここで、赤色の項について、j が条件(2)を満たす場合を考える。つまり、\{\sigma(1),\;\sigma(2),\;\cdots,\;\sigma(n) \} の中に1つでも r より大きい数字がある場合は、条件(2)より

    \begin{eqnarray*}x_{1\sigma(1)} x_{2\sigma(2)}\cdots x_{n\sigma(n)}=0\end{eqnarray*}

になる。よって(*)における \sigma の和は、

    \begin{eqnarray*}\{\sigma(1),\;\sigma(2),\;\cdots,\;\sigma(n) \}=\{1,\,2,\,\cdots,\,n\}\end{eqnarray*}

について取れば良い。このときには残りの置換について、

    \begin{eqnarray*}\{\sigma(n+1),\;\sigma(n+2),\;\cdots,\;\sigma(p) \}=\{n+1,\,n+2,\,\cdots,\,p\}\end{eqnarray*}

になる。上の2つの置換を、

    \begin{eqnarray*}\tau_1&=&\left(\begin{array}{cccc}1&2&\cdots&n\\\sigma(1)&\sigma(2)&\cdots&\sigma(n)\end{array}\right)\\ \\\tau_2&=&\left(\begin{array}{cccc}n+1&n+2&\cdots&p\\\sigma(n+1)&\sigma(n+2)&\cdots&\sigma(p)\end{array}\right)\end{eqnarray*}

と定義する。ただし、\tau_1 \in S_{n},\, \tau_2 \in S_{p-n}。また、元の置換 \sigma=\tau_1 \tau_2 で表すことができる。さらに、置換の符号について、

    \begin{eqnarray*}{\rm sgn}(\sigma) = {\rm sgn}(\tau_1 \tau_2)={\rm sgn}(\tau_1){\rm sgn}(\tau_2)\end{eqnarray*}

が成り立つ。

したがってX の行列式(*)は、

    \begin{eqnarray*}{\rm det}(X)&=& \sum_{tau_1tau_2} {\rm sgn}(\tau_1 \tau_2)\, x_{1\tau_1(1)}\cdots x_{n\tau_1(n)} \, x_{n+1\tau_2(n+1)}\cdots x_{p\tau_2(p)} \\ \\&=&\left( \sum_{\tau1} {\rm sgn}(\tau_1) \, x_{1\tau_1(1)}\cdots x_{n\tau_1(n)} \right)\left( \sum_{\tau2} {\rm sgn}(\tau_2) \, x_{n+1\tau_2(n+1)}\cdots x_{p\tau_2(p)} \right)\\ \\&=&{\rm det}(A)\,{\rm det}(D)\end{eqnarray*}

となる。\quad \blacksquare

 もう1つの関係式

    \begin{eqnarray*}{\rm det}\left(\begin{array}{cc}A & B\\ O & D\end{array}\right)={\rm det}(A){\rm det}(D)\end{eqnarray*}

については、転置行列の行列式の関係、

転置行列の行列式

    \begin{eqnarray*}{\rm det}(^t A)={\rm det}(A)\end{eqnarray*}

を用いればよい。

2.2 例題

例題

 次の行列式を計算せよ。

    \begin{eqnarray*}{\rm det(X)}=\left| \begin{array}{ccccc}3&1&1&0&0\\-5&1&3&0&0\\2&0&-1&0&0\\1&3&-2&1&2\\4&-1&3&4&6\end{array}\right|\end{eqnarray*}

【解答】行列 A,D を以下のように置く。

    \begin{eqnarray*}A=\left( \begin{array}{ccc}3&1&1\\-5&1&3\\2&0&-1\end{array}\right),\;D=\left( \begin{array}{cc}1&2\\4&6\end{array}\right)\end{eqnarray*}

このとき、

    \begin{eqnarray*}{\rm det}(A)&=&\left| \begin{array}{ccc}3&1&1\\-5&1&3\\2&0&-1\end{array}\right|=-4\\ \\{\rm det}(D)&=&\left| \begin{array}{cc}1&2\\4&6\end{array}\right| = -2\end{eqnarray*}

である。したがって、

    \begin{eqnarray*}{\rm det}(X)={\rm det}(A)\,{\rm det}(D)=(-4)\cdot(-2)=8\end{eqnarray*}

となる。 \blacksquare

3. まとめ

 この行列式の関係は非常にわかりやすい式であるが、証明は見かけ以上に難しく複雑である。例題を見ればわかるように、零行列 O があるときに非常に強力な武器になるので覚えておいてほしい。


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