が 次正方行列、 が 次正方行列のとき、
零行列 があるときの行列式
が成立することの証明です。
1. n次正方行列の行列式
各種記号については、参考:置換σを用いた行列式の定義を参照されたし。
定義:
次正方行列 の行列式 det() は、
である。
2. det(A B O D)=det(A)det(D)
置換の扱いに慣れていないと難しいかもしれない。
2.1 証明
【証明】 が 次正方行列、 が 次正方行列であるため、 次正方行列を とする。
と置く。 は 行列式の定義(*)より、
零行列 の部分に注目すると、以下の条件を両方満たす要素 は0である(すなわち零行列 にある要素)。
行列式の定義式(*)のの、条件(1)を満たす項に注目する。
ここで、赤色の項について、 が条件(2)を満たす場合を考える。つまり、 の中に1つでも より大きい数字がある場合は、条件(2)より
になる。よって(*)における の和は、
について取れば良い。このときには残りの置換について、
になる。上の2つの置換を、
と定義する。ただし、。また、元の置換 で表すことができる。さらに、置換の符号について、
が成り立つ。
したがって の行列式(*)は、
となる。
もう1つの関係式
については、転置行列の行列式の関係、
転置行列の行列式
を用いればよい。
2.2 例題
例題
次の行列式を計算せよ。
【解答】行列 を以下のように置く。
このとき、
である。したがって、
となる。
3. まとめ
この行列式の関係は非常にわかりやすい式であるが、証明は見かけ以上に難しく複雑である。例題を見ればわかるように、零行列 があるときに非常に強力な武器になるので覚えておいてほしい。