【行列式】置換σを用いたn次正方行列の行列式(定義)


 行列を学ぶと「置換」という概念に出会う。どれくらい置換が有用なのかは行列式を扱っている時にわかってくる。ここでは、n 次正方行列の行列式を定義する。それは置換 \sigma により定義されるので、置換に関する必要事項から説明する。最後には3次の正方行列の行列式に関連して、「サラスの方法」も導いている。



1. 置換の基礎

 定義を行う上で理解しておくべき知識です。

1.1 置換とは

 n個の文字(要素){1,2,\cdotsn}から自分自身{1,2,\cdotsn}への1対1の写像を考える。
(元の数字)\rightarrow(行き先の数字)
で表すとする。たとえば、{1,2,3,4}に対して、

    \begin{eqnarray*}1\rightarrow2\\2\rightarrow4\\3\rightarrow1\\4\rightarrow3\end{eqnarray*}


のように置換するとする。置換を \sigma とすると、今の例では

    \begin{eqnarray*}\sigma=\left(\begin{array}{cccc}1&2&3&4\\ 2&4&1&3\end{array}\right)\end{eqnarray*}

となる。これを要素ごとに表すと、

    \begin{eqnarray*}\sigma(1)\rightarrow2\\\sigma(2)\rightarrow4\\\sigma(3)\rightarrow1\\\sigma(4)\rightarrow3\end{eqnarray*}

となる。

\sigmaを使った置換の表現

 

\sigma(元の数字)\rightarrow (行き先の数字)

 4つの数字のうち2個はそのままで残りの2個だけ置換する場合について考える。例えば、1と3を入れ替える場合、

    \begin{eqnarray*}\sigma=\left(\begin{array}{cccc}1&2&3&4\\ 3&2&1&4\end{array}\right)\end{eqnarray*}

である。入れ替えないものをわざわざ書くのも面倒なので、通常

    \begin{eqnarray*}\sigma=\left(\begin{array}{cc}1&3\\ 3&1\end{array}\right)\end{eqnarray*}

と表される。

 何も入れ替えない置換は単位置換 \varepsilon を用いて、

    \begin{eqnarray*}\sigma=\left(\begin{array}{cccc}1&2&3&4\\ 1&2&3&4\end{array}\right)\end{eqnarray*}

については、

    \begin{eqnarray*}\sigma=\varepsilon\end{eqnarray*}

と表す。

1.2 巡回置換

 巡回的に入れ替える場合(巡回置換)、たとえば、

    \begin{eqnarray*}\sigma=\left(\begin{array}{cccc}1&2&3&4\\ 2&3&1&4\end{array}\right)\end{eqnarray*}

の場合は、\sigma=(1\;2\;3)と表す。1の行き先が3の場合は、

    \begin{eqnarray*}\sigma=\left(\begin{array}{cccc}1&2&3&4\\ 3&1&2&4\end{array}\right)\end{eqnarray*}

となり、\sigma=(1\;3\;2)と表す。

1.3 置換の符号sgnと偶置換・奇置換

 行列式では行の入れ替えにより符号が入れ替わる。ここでは、置換の符号sgn(\sigma)を導入する。

sgn(\sigma)

 

\sigmam(=偶数)回の置換を行う場合、{\rm sgn}(\sigma)=(-1)^m=1
\sigmam(=奇数)回の置換を行う場合、{\rm sgn}(\sigma)=(-1)^m=-1

 偶数回の置換を行う {\rm sgn}(\sigma)=1 のものを偶置換、奇数回の置換を行う {\rm sgn}(\sigma)=-1 のものを奇置換と呼ぶ。

1.4 置換全体の集合

 2個の数字しかない {1,2} の場合、置換の方法は何通りあるだろうか。それは、単位置換と数字の入れ替え 1\leftrightarrow2 のみである。このとき、

    \begin{eqnarray*}\sigma=\varepsilon, \; (1 \;2)\end{eqnarray*}

のみである。数字が2個の場合の置換全体の集合 S_2 を、

    \begin{eqnarray*}S_2 =\{ \varepsilon, \; (1 \;2) \}\end{eqnarray*}

として表す。
数字が3個ある場合の置換全体の集合 S_3 は、

    \begin{eqnarray*}S_3 =\{ \varepsilon, \; (1 \;2),\; (2 \;3),\; (3 \;1),\; (1 \;2 \;3),\; (1 \;3 \; 2)\}\end{eqnarray*}

である。数字が n 個ある置換全体の元の個数は n! である。

2. n次正方行列式の定義

定義:n 次正方行列 A の行列式 det(A) は、

    \begin{eqnarray*}{\rm det}(A) = \sum_{\sigma \in S_n} {\rm sgn}(\sigma)a_{1\sigma(1)}a_{2\sigma(2)}a_{3\sigma(3)}\cdots a_{n\sigma(n)}\end{eqnarray*}

で表す。a_{1\sigma(1)} は、
 \sigma=(1, 2)のとき、a_{1\sigma(1)}=a_{12}
 \sigma=(1, 4, 5, 2, 3)のとき、a_{1\sigma(1)}=a_{14}a_{5\sigma(5)}=a_{52}
などである。以下では具体的に行列式の計算をしてみる。

2.1 2次正方行列の行列式

 S_2=\{ \varepsilon, \; (1,\;2)\}のとき、

    \begin{eqnarray*}{\rm det}(A)&=&{\rm det} \left( \begin{array}{cc}a_{11} & a_{12} \\ a_{21} & a_{22}\end{array} \right)\\&=&{\rm sgn}(\varepsilon)a_{11}a_{22} +{\rm sgn}(\,(1\;2)\,) a_{12}a_{21}\\&=&a_{11}a_{22}-a_{12}a_{21}\end{eqnarray*}

置換(1, 2) は1と2の1回(奇数回)の奇置換であるため {\rm sgn}((1,2))=-1である。

2.23次正方行列の行列式

 S_3 =\{ \varepsilon, \; (1 \;2),\; (2 \;3),\; (3 \;1),\; (1 \;2 \;3),\; (1 \;3 \; 2)\} のとき、
偶置換:\varepsilon,\; (1\;2\;3),\;(1\;3 \;2)
奇置換:(1\; 2),\; (2 \;3),\;(3 \;2)であるので、

    \begin{eqnarray*}{\rm det}(A)&=&{\rm det} \left( \begin{array}{ccc}a_{11} & a_{12} & a_{13} \\a_{21} & a_{22}& a_{23} \\a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{array} \right)\\ \\&=&{\rm sgn}(\varepsilon)a_{11}a_{22}a_{33} + {\rm sgn}(\,(1\;2)\,) a_{12}a_{21}a_{33}\\&+&{\rm sgn}(\,(2\;3)\,) a_{11}a_{23}a_{32} + {\rm sgn}(\,(3\;1)\,) a_{13}a_{22}a_{31}\\&+&{\rm sgn}(\,(1\;2\;3)\,) a_{12}a_{21}a_{33} + {\rm sgn}(\,(1\;3\;2)\,) a_{13}a_{21}a_{32}\\ \\&=&a_{11}a_{22}a_{33}+a_{12}a_{21}a_{33}+a_{13}a_{21}a_{32}\\&-&a_{12}a_{21}a_{33}-a_{11}a_{23}a_{32}-a_{13}a_{22}a_{31}\end{eqnarray*}

を得る。これらはサラスの方法として知られている。

3. まとめ

 置換記号 \sigma や sgn は一般化されているとわかりにくい。しかし、具体例を考えてみると非常に単純な操作をしているにすぎない、ということがわかる。行列式の定義も一見ややこしいが、2次、3次の例で十分習得できたと思う。

 \sigma と sgn を用いた行列式の定義により、様々な行列式の性質を導けるだろう。関連する記事を参照されたし。


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