微小振動の例として円筒振り子がある。この円筒振り子の中にさらに円柱を入れて2つの微小振動を見る。以下の例題で考える。
左が厚みのない円筒の振り子。右が円筒振り子内の円柱(灰色)。
半径 の円筒振り子の軸まわりの慣性モーメント :
半径 、質量 の円柱の軸周りの慣性モーメント :
この円柱の単位面積当たりの質量(面密度)は
である。慣性モーメントは半径 に依存する。したがって、下のような薄い半径 の円筒の慣性モーメントを で足し合わせれば となる。この薄い円筒の質量は(面密度)× である。
次に、円筒と円柱がそれぞれ基準位置からずれた場合を考える。下の図のように変数を設定する。
系の運動エネルギー は、
- 円筒振り子の回転のエネルギー(について)
- 円柱の並進の運動のエネルギー(について)
- 円柱の回転の運動エネルギー(について)
の和になる。ここで、運動エネルギーは慣性モーメント と角度 を用いて、
の形になることを利用する。また、円柱の重心の回転運動( について)の 慣性モーメント は
である。以上より、系全体の運動エネルギー は
次に位置エネルギーを考える。系の位置エネルギーの総和 は
- 点 の位置エネルギー
- 円柱重心の位置エネルギー
の和になる。微小振動の場合は であり、 を利用する。
よって、系のポテンシャルエネルギー は、
円柱が円筒をすべらない条件は、
で与えられるため、
より、運動エネルギー から を消去する。
したがって、ラグランジアン は、
となる。これより、オイラー・ラグランジュ方程式から に関する連立運動方程式がわかる。
より、
について:
について:
ここで、 とおいてまとめると、
この連立微分方程式を解くために、
とおくと、
となる。これを微分方程式へ代入して、
これが、自明な解()以外を持つためには行列式が になる。
それぞれの固有値を とおく。この結果から、系の振動は の基準振動の重ね合わせである(2質点の連成振動を思い出す)。
最後に固有関数(振動のモード)を求めると、
となる。したがって の振幅の比 は固有関数の比、すなわち、
上で見てきたように、円筒振り子の中の円柱(微小振動)はそれぞれの基準振動を重ね合わせた振動となる。の場合は、それぞれ微小振動で自由振動(単振動)として扱える。このような自由振動が重ね合わさるような運動は、2質点の連成振動となんら変わりない。