水素原子の動径方向の波動関数を求めるときに使われる、ラゲール(Laguerre)多項式などをまとめる。証明付きでよく使う式もまとめた。
また、ラゲール多項式 のみで数式が多くなったので、ラゲール陪多項式とラゲール関数については別に扱う。
目次
ラゲール多項式と陪多項式の注意
おもに、ラゲール多項式 とラゲール陪多項式 について学ぶ。 の肩に があるかどうか注意しておく。ただし、 の関係は一応ある。 の有無は、微分方程式の中に が入っているかどうかでわかる。
以下では、微分方程式とラゲール多項式について簡単にまとめた。
ラゲールの微分方程式
ラゲール多項式を導くラゲールの微分方程式
ラゲールの微分方程式は
の形をしている。 は の整数のとき解が存在することが知られており、そのひとつの解はラゲール多項式 によって表される。
ラゲール陪多項式を導く微分方程式
次にラゲールの陪多項式に関する微分方程式をつくる。 として、上の微分方程式を について 回微分すると、左辺は
式変形の途中、合成関数の回微分を実行するときにライプニッツの定理(「二項定理の微分版」のようなもの)
を用いた。
得られた微分方程式
において とすると、
となる。微分方程式(d2′)の解の一つはラゲール陪多項式 になる。微分方程式に が含まれるため、多項式は の添え字をもつ。 陪多項式とラゲール多項式 の関係は
である。
以下、微分方程式(d2)の解のひとつが になることを示す。
微分方程式(d1)の解がラゲール多項式 であったから、
が成り立つ。これを 回微分したものは式(d2)に を代入したもので、
となる。
と置けば、式(d3)より、
となる。したがって、 は微分方程式(d2′)を満たす解になっている。
*これらの微分方程式はステュルム-リウヴィル型微分方程式に含まれる。
ラゲール多項式の諸性質と証明
ラゲール多項式 はラゲールの微分方程式を満たすである。
母関数
母関数は
となる。
多項式展開
母関数を使って
のように多項式展開できる。ここで、 についての和は の代わりに でも良い。なぜなら で
となるためである(因数が個あるため)。
(*)より
である。左辺を展開して のベキで表そう。 まず、左辺の をマクローリン展開して整理する。
ここで、
と
を利用した。
得られた(*)と(*’)から
となる。 の係数を比べるため、 とすると、左辺の の係数は
となる( は の条件で消えるが、 は消えない)。したがって、
となる。
便利な式
上の の多項式展開を利用して
が得られる。
左辺から右辺を導く。合成関数の微分については、上述したライプニッツの定理を利用する。 最後に上で求めた の多項式展開を利用する。
上で説明したように、 の和は までとしても良い。
直交性、正規直交基底の導入
は正規直交基底をなす。つまり、
となる。 については直交基底である。つまり
である(規格化はされていない)。
以下では が直交系をなし、 が正規直交していることを示す。 基本的に式(2)を用いて、部分積分を複数回実行する。また、 としても一般性は失われない。
とする。部分積分を回の実行することで、
としていく。
合成関数の微分に注意しながら計算を進める。
つぎに、最後の行の積分を回部分積分する。
これを式(3)へ代入して、
となる。
つぎにこの積分を実行する。簡単のため 置いて
の振る舞いをみる。 かつ なので、 である。 (i) のとき:
ここで、 より、 を 回微分したときの関数が、因数として をもつことを利用した ( は で 0 になる)。 (ii) のとき:
となる。積分はガンマ関数 の形をしており、部分積分を実行すれば容易に計算できる。
(i)(ii)の結果をまとめて
となる。
であり、 としていたので、 である。 また、このとき、 になる。これらの結果をまとめると、 かつ のときのみ積分がゼロでない となることがわかる。
したがって のとき、式(3′)より、
これより、 の直交性
また、 と定義すれば、 が正規直交基底をなすこともわかる。
はじめの5項の値
はじめの5つ程度の項を具体的に書いておく。
を用いて簡単に求めることができる。