【重積分】面積のイメージで学ぶ「ヤコビアン」の意味


 ここではヤコビアンのイメージを伝えるため、 2変数関数の重積分(面積)を例にとる。 xy, 平面→ u,v 平面の変数変換によるヤコビアン(ヤコビ行列; Jacobian matrix)は

    \begin{eqnarray*} J(u,v)=\left|\begin{array}{cc} \frac{\partial x}{\partial u} & \frac{\partial x}{\partial v}\\\\ \frac{\partial y}{\partial u} & \frac{\partial y}{\partial v} \end{array} \right| \end{eqnarray*}

である。


1. ヤコビアンのイメージ

x,y 平面の中にある図形の面積を求めるために工夫をする。 その過程でヤコビアンが必要になる。そのことを順に見ていこう。


xy平面の面積

 下の赤い線で囲まれた図形の面積を求めたい。xy 平面で積分しようとすると少し計算が煩雑である。

ここでは、

「積分して面積を求めること」

面積1の正方形タイル何個分であるか求めること

と考えて説明していく。簡単な例なのでタイルの数はすぐに求められるが、タイルの数(面積)を変数変換によって求めていく。



なぜ変数変換するのか

 数学でも物理でも、変数変換は頻出である。変数変換する理由は、

  • 式の形をかんたんにする
  • 式の形を計算をかんたんにする

などいろいろな理由がある。ここでは積分計算を簡単にするための変数変換について主に扱う。



 上の赤い線で囲まれた面積を求めるために、x,y を変数変換して u,v にしたとする。 この変数変換により、下図のように座標系の軸が変わるものを選ぶ。

このような軸をもつ u,v 平面に変数変換できれば、

xy 平面で面積1の正方形タイルは何個?」

という問題を

uv 平面で面積~~~のタイルは何個?

という問題に変えることができる。



 見ての通り、新しい uv 平面で用意したタイルで赤い図形を埋めるのは簡単そうである。 たとえば、上のような青いタイルを9個分使えばよいことがわかる。



uv平面のタイル

 ここで、ひとつの問題がある。

uv 平面で用意するタイルの大きさがいろいろある

ということである。 下図のように大きさの異なるタイルを用意すれば、同じ図形でも必要となるタイルの数は異なる。 図の左の大きなタイルを用いると4個で済むし、右の小さなタイルを用いると25個いる。



 用意したタイルの大きさによって、同じ図形の面積がいろいろな値をとるのはおかしい。 そこで、 uv 平面で用意したタイルが、元の xy 平面での正方形タイル(面積1)と比べてどのくらい大きいかを考慮すれば良いことがわかる。

 その役割をするのがヤコビアンである。もう少し正確な表現を見ていく。



ヤコビアンの意味

 同じ図形を xy 平面と、変数変換した先の uv 平面で測る。このとき、それぞれの平面で「基準となるタイル」の大きさが同じとは限らない。

 すなわち、基準となる dxdydudv の面積は異なる


 知りたい面積は dxdy で測られたもの(タイル何個分か)であり、dudv で測られたものではない。最も単純な変換として面積を {\rm m}^2{\rm cm}^2 で測る例など考えられる。


 ヤコビアン J{\rm m}^2\to {\rm cm}^2 に変換するための 100^2 倍のような役割をする。つまり、dudv\to dxdy の変換のために J 倍するのである。


 注意点として、一般の JJ(u,v)u,v の関数であって、定数ではない。つまり、用意するタイル dudvdxdy の比は位置 (u,v) によって異なる。表式として

    \begin{eqnarray*} dxdy=\textcolor{red}{J(u,v)}\,dudv \end{eqnarray*}

と書く。


重積分の中にあるときは

    \begin{eqnarray*} \iint f(x,y) \,dxdy = \iint g(u,v) \,\textcolor{red}{J(u,v)}\, dudv \end{eqnarray*}

となる。



二次元極座標変換の絵

 二次元極座標変換

    \begin{eqnarray*} x&=&r\cos \theta\\ y&=&r\sin  \theta \end{eqnarray*}

についてヤコビアンを計算すると

    \begin{eqnarray*} J(r,\theta)=r \end{eqnarray*}

である。


したがって、

    \begin{eqnarray*} dxdy=\textcolor{red}{J(r,\theta)}drd\theta=r\,drd\theta \end{eqnarray*}

となる。「基準となるタイル」が r に依存するのは以下の絵からわかる。

原点から離れるほど、r\,drd\theta は大きくなる。



2. まとめ

 面積を例にとってヤコビアンの意味を見てきた。体積に関する話でも、4次元以上でも同じように考えることができる。

 xy 平面において、もっとグニャグニャの図形でも、うまい変数変換により簡単に面積が求められることもある。



1件のコメント

  1. 匿名

    いろいろなサイトの中で一番わかりやすいです
    具体的で イメージしやすい

    ありがとうございました

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