【数検1級】三乗根の二重根号を外す計算


 数学検定1級(数検1級)によくでる三乗根を簡単に計算する方法を紹介します。数検1級に受かる上では知っておくべき計算のひとつでしょう。ここでは、2乗根の二重根号の例をはじめに計算して、三乗根へとつなげます。

 今回、解きたいのは以下の数検1級1次レベルである以下の問題だ。

例題

次の根号を簡単にせよ。

    \begin{eqnarray*} \sqrt[3]{5\sqrt{2}-7}\end{eqnarray*}

1. 二重根号を簡単に(高校数学)

 これは高校レベルでしょうか。順番に見ていきます。とりあえず例題。

例題1

次の根号を外せ。

    \begin{eqnarray*} \sqrt{(a+b\sqrt{3})^2} \end{eqnarray*}

簡単に外せそうです。

【解答】

    \begin{eqnarray*} \sqrt{(a+b\sqrt{3})^2}=|a+b\sqrt{3}|\quad \blacksquare \end{eqnarray*}

 絶対値を忘れ無いでください。なぜ絶対値がつくかわから無い方は、a=-10b=1 で計算すると分かると思う。左辺のルートは正です。結局、ルートの中に2乗を作ればいいだけです。

次の例題へ行きましょう。

1.1 よく出る2重根号を外す問題

例題2

次の根号を外して簡単にせよ。

    \begin{eqnarray*}\sqrt{2-\sqrt{3}} \end{eqnarray*}

 二重根号の問題で、高校数学レベルです。解き方は、\sqrt{a+2 b\sqrt{c}} の形にすれば良いのでした。つまり、(\quad)^2 の形を目指す。(問題として出されている以上 \sqrt の中身が (\quad)^2 となるはずです。)

【解答】

    \begin{eqnarray*} \sqrt{2-\sqrt{3}}&=&\sqrt{ \frac{4-2\sqrt{3}}{2} }\\ &=&\sqrt{ \frac{ \left( \sqrt{3}-\sqrt{1} \right)^2 }{2}}\\ &=&\frac{\sqrt{3}-1}{\sqrt{2}}\\ &=&\frac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{2} \quad \blacksquare \end{eqnarray*}

 最後の有理化はしなくても正解です。途中の \sqrt{\sqrt{3}-\sqrt{1}} のところで、\sqrt{\sqrt{1}-\sqrt{3}} としても構いませんが、絶対値を気にし無いといけないので避けた方がいいでしょう。「√(大きい数)-√(小さい数) 」が無難である。

1.2 別解を考える

 無理やり簡単にした形を仮定して解いてみるやり方を紹介します。先ほどの例で解説します。

例題2

次の根号を外して簡単にせよ。

    \begin{eqnarray*}\sqrt{2-\sqrt{3}} \end{eqnarray*}

 ルートの中に \sqrt{3} が見えるので、簡単にした形にも \sqrt{3} がありそうです。ということで a,b実数として下のように置く。

    \begin{eqnarray*} \sqrt{2-\sqrt{3}}=a+b\sqrt{3} \end{eqnarray*}

両辺を2乗して整理する。

    \begin{eqnarray*} \left(\sqrt{2-\sqrt{3}}\right)^2&=&\left((a+b\sqrt{3}\right)^2\\ \\ 2-\sqrt{3}&=&a^2 +2ab\sqrt{3} + 3b^2 \\ \\ (a^2+3b^2 - 2)+\sqrt{3}(2ab + 1)&=&0 \end{eqnarray*}

 ここで、a,b は 実数であり \sqrt{3} は無理数であるから、第1項は実数、第2項は無理数である。つまり、それぞれのカッコは0になる。

    \begin{eqnarray*} \begin{cases} a^2+3b^2 - 2=0\\ 2ab + 1 = 0 \end{cases} \end{eqnarray*}

とにかく、この連立方程式を解いて a,b を求めれば良い。この場合、下の式を2倍して上の式に足すと簡単に解ける。

    \begin{eqnarray*} && a^2 + 4ab + 3b^2 = 0 \\ \Leftrightarrow && (a+3b)(a+b)=0 \\ \Leftrightarrow && a=-b,-3b  \end{eqnarray*}

これを下の式に代入して b が求められる。

    \begin{eqnarray*} (a,b)=(-\frac{1}{\sqrt{2}},\frac{1}{2}),(-\frac{3}{\sqrt{6}},\frac{1}{\sqrt{6}}) \end{eqnarray*}

1個目の方は、1.1の解法の答えと一致していることがすぐにわかる。2個目の \sqrt{6} について、

    \begin{eqnarray*} a+b\sqrt{3}&=&-\frac{3}{\sqrt{6}}+\frac{1}{\sqrt{6}}\,\sqrt{3}\\ &=& -\frac{\sqrt{6}}{2}+\frac{\sqrt{2}}{2}\\ &=& -\frac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{2} \;(<0) \end{eqnarray*}

 これは負になる。というのも、a+b\sqrt{3} と置いて2乗しているために解として、±の形で出てきてしまった。この場合は、\sqrt{3} > 0 であることから、プラスの解を答えとして取れば良い。もちろん、1.1の解き方と同じ結果になる。

    \begin{eqnarray*} \sqrt{2-\sqrt{3}}=\frac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{2} \quad \blacksquare \end{eqnarray*}

 これが高校数学のレベルである。

2. 3乗根を簡単に。

 \sqrt[3]{a+b\sqrt{c}} 型の問題に移りたい。

2.1 「つまらない」問題

例題3

次の3重根を簡単にせよ。

    \begin{eqnarray*}\sqrt[3]{(a+b)^3}\end{eqnarray*}

 簡単に解ける。

    \begin{eqnarray*}\sqrt[3]{(a+b)^3} =a+b \end{eqnarray*}

 絶対値はいらない。\sqrt[3]{-(a+b)^3}=-(a+b) のように3乗根はルートの中に負の数が入る時もある。

2.2 「つまる」問題(数検1級レベル)

 a=\sqrt{2},\, b=-1 として (\sqrt{2}-1)^3 を展開したもので問題を作る。

    \begin{eqnarray*} (\sqrt{2}-1)^3 &=&2\sqrt{2}-3\cdot 2 +3\sqrt{2} -1 = 5\sqrt{2} - 7 \end{eqnarray*}

 である。\sqrt{2} - 1 を答えにして問題を作ると下のようになる。

例題4

次の根号を簡単にせよ。

    \begin{eqnarray*} \sqrt[3]{5\sqrt{2}-7}\end{eqnarray*}

 急に難しく見えるだろう。2乗根のときと同じ1.1 の方法で、\sqrt[3]{\cdots}の中身を(\quad)^3 の形に持っていくのは難しい。これは式の展開は簡単に行えるが、因数分解は難しいということを意味している。大きな素数同士の積を素因数分解するのが難しいというRSA暗号と同じような理屈であろう。

 そこで、1.2 の方法を継承することになる。5\sqrt{2}-7\sqrt{2} に注目して、根号を外した形を仮定する。a,b実数とする。

    \begin{eqnarray*} \sqrt[3]{5\sqrt{2}-7}=a+b\sqrt{2} \end{eqnarray*}

両辺を3乗して整理する。

    \begin{eqnarray*} &&5\sqrt{2}-7=a^3 +3a^2b\sqrt{2} + 6ab^2 + 2b^3 \sqrt{2} \\ \\ \Leftrightarrow && 5\sqrt{2}-7 = a^3 + 6ab^2 +\sqrt{2}(3a^2 b + 2b^3)\\ \\  \Leftrightarrow && (a^3 + 6ab^2 + 7) + \sqrt{2}\,(3a^2 b + 2b^3 -5)=0 \\ \\ \therefore && \begin{cases} a^3 + 6ab^2 + 7 =0 \\ 3a^2 b + 2b^3 -5 = 0 \end{cases} \end{eqnarray*}

 この連立方程式を解いて a,b を求めれば良い。ただし、この連立方程式は解きにくいため、上式を5倍、下式を7倍して足して定数項を消してみる。そうすると新しい式を得る。

    \begin{eqnarray*} 5a^3 +  21a^2 b + 30ab^2 + 14 b^3 = 0 \end{eqnarray}

 これは、以下の f(x) の因数を求める問題と同じ要領で求められる。

例題5

f(x) の因数を求めよ。

    \begin{eqnarray*} f(x)=5x^3 + 21 x^2 + 30 x + 14 \end{eqnarray*}

 数検の1次の問題で出題されるのであれば、係数はそこまで複雑ではない(だろう)。そして、もっと綺麗に連立方程式が解けるように作られてるとも思う。

 ここでは、容易に f(-1)=0 がわかるので因数定理より (x+1) を因数にもつ。以下の因数分解は、解の公式やらを用いて複素数の範囲でおこなった

    \begin{eqnarray*} f(x)&=&5x^3 + 21 x^2 + 30 x + 14\\ \\  &=&(x+1)(5x^2+16x +14)\\ \\ &=&(x+1)\cdot 5\left(x-\frac{-8+\sqrt{(-8)^2 - 5\cdot 14} }{5} \right) \left(x-\frac{-8-\sqrt{(-8)^2 - 5\cdot 14} }{5} \right)\\ \\ &=& 5(x+1)\left(x+\frac{8-i\sqrt{6}}{5}\right) \left(x+\frac{8+i\sqrt{6}}{5}\right) \end{eqnarray*}

 もちろん実係数 a,b を考えているため、a=-1 をとる。このときの b は、

    \begin{eqnarray*}  a^3 + 6ab^2 + 7 =0 &&\Leftrightarrow -1-6b^2 +7 =0 \\ \\ &&\therefore b=\pm 1 \end{eqnarray*}

 となる。したがって、(a,b)=(-1,\pm 1)となる。ここで以下の式に戻って、

    \begin{eqnarray*} \sqrt[3]{5\sqrt{2}-7}=a+b\sqrt{2} \end{eqnarray*}

5\sqrt{2}-7 は正であるため、左辺の \sqrt[3]{5\sqrt{2}-7} > 0 である。

 一方で、(a,b)=(-1,-1) のとき右辺が負になるので不適。(a,b)=(-1,1) のときは、\sqrt{2}-1 > 0 より適。したがって、

    \begin{eqnarray*} \sqrt[3]{5\sqrt{2}-7}=\sqrt{2}-1 \end{eqnarray*}

と簡単にすることができる。 \quad \blacksquare

 3重根を外す問題のポイントは以下の通り。

3重根を簡単にする

    \begin{eqnarray*} {\sqrt[3]{a+b\sqrt{c}}= p+q\sqrt{c} \end{eqnarray*}

と実係数 p,q で置く。その後、両辺を3乗して実数 p,q を求める問題に帰着。

 ここで、\sqrt[3]{a\sqrt{d}+b\sqrt{c}} 型については考えなかった。これは、根号の中身の c,d が互いに素の場合などに、展開したものが綺麗にまとまらないことがあるためである。言ってしまえば複雑になり面倒なのである。

3. まとめ

 二重根号の外し方を扱いました。3乗根のパターン数検1級の1次試験で出るような問題です(計算が多い)。過去問に載ってたりしますが、受験者の方は習得しておくとよいでしょう。

 あと「つまる」=「not つまらない」ではない。


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