【外積】ベクトルの外積とレヴィ=チヴィタの記号(Levi-Civita)


 電磁気学では外積計算が多い。さらにベクトル解析では学ぶ様々な公式は覚えにくい。しかし、レヴィ=チヴィタの記号\varepsilon_{ijk} を習得すればベクトル解析で学ぶような \nabla\times(\nabla\times {\bf A})=0などの公式は即座に導ける。この証明は記事の最後で扱った。



1. レヴィチ=ヴィタを定義する

 \varepsilon_{ijk} は3階の反対称テンソルである。反対称とは添字の入れ替えに対して符号が変わる、すなわち、 jkの入れ替えに対して、

    \begin{eqnarray*}\varepsilon_{ijk}=-\varepsilon_{ikj}\end{eqnarray*}

 
が成り立つ。

    \begin{eqnarray*}\varepsilon_{ijk}=\begin{cases}+1  \left( (i,j,k)=(1,2,3), \; (2,3,1), \; (3,1,2) \right)\\-1   \left( (i,j,k)=(1,3,2), \; (3,2,1), \; (2,1,3) \right)\\0 ({\rm otherwise})\end{cases}\end{eqnarray*}

 


 ”otherwise”の例として、\varepsilon_{112}\varepsilon_{313}は0である。定義から分かる通り対角要素はゼロで、ほとんどの要素がゼロである。3階テンソルを要素を視覚的に表すと下図のようになる。

Levi-Civita-symbol

 ベクトル外積を計算する上で重要な公式:

    \begin{eqnarray*}\sum_{i} \varepsilon_{ijk}\varepsilon_{ilm}=\delta_{jl}\delta_{km}-\delta_{jm}\delta_{kl}\quad\cdots (1)\end{eqnarray*}

 
がある。\delta_{ij}はクロネッカーのデルタで、

    \begin{eqnarray*}\delta_{ij}=\begin{cases}1 &&(i=j)\\0 &&(i \neq j)\end{cases}\end{eqnarray*}

 
で表される。覚え方は共通の指数iを同じ場所(ここでは1番目)にもってきて、下の図のように「2番目同士の\deltaと3番目同士の\deltaとの積」から「指数を入れ替えた積」を引いてやる。

Levi-Civita-symbol1

図的に表すと左辺は、

Levi-Civita-symbol1-1

 

となり、2つのレヴィ=チヴィタ記号の積を与える(iで和をとる)。i=1のとき、具体的に一番下の段だけ取り出して考えると、

Levi-Civita-symbol2

 のようになる。ここでは、要素が0になるi,j,l,mのすべてが1(=i)でない4通りを考えた。得られる値は明らかに1-1のみであり、\delta_{jl}\delta_{km}-\delta_{jm}\delta_{kl}と表すことができる。

2. ベクトル外積の表現

 ベクトル{\bf A},{\bf B} のベクトル積(外積)のi成分は、

    \begin{eqnarray*}[{\bf A}\times{\bf B}]_i &=& A_j B_k -A_k B_j\\&=&\sum_{j,k} \varepsilon_{ijk}A_j B_k\end{eqnarray*}


で表すことができる。i以外の添字は和を取るという約束をすると、

    \begin{eqnarray*}[{\bf A}\times{\bf B}]_i = \varepsilon_{ijk}A_j B_k\end{eqnarray*}


のような\Sigmaを省略した表現が得られる。

3. ベクトル三重積の計算

以下の計算に現れるj,k,l,mはダミーの添え字ですべての和をとることを意味する。例えば、jについては\sum_{j=1}^{3}をとる。

    \begin{eqnarray*}\Bigl[ {\bf A}\times ({\bf B}\times{\bf C}) \Bigr]_i&=&\varepsilon_{ijk} A_j \bigl({\bf B}\times {\bf C}\bigr)_k\\&=&\varepsilon_{ijk} A_j \varepsilon_{klm} B_l C_m\\&=&\varepsilon_{ijk}\varepsilon_{klm} A_j B_l C_m\\&=&\varepsilon_{kij}\varepsilon_{klm} A_j B_l C_m \quad(\because \varepsilon_{ijk}=-\varepsilon_{ikj}=\varepsilon_{kij})\\&=& (\delta_{il}\delta_{jm}-\delta_{im}\delta_{jl})A_j B_l C_m\\&=& A_j B_i C_j - A_j B_j C_i\\&=& B_i (A_j C_j) - C_i (A_j B_j)\\&=& B_i ({\bf A}\cdot {\bf C}) - C_i ({\bf A}\cdot {\bf B})\end{eqnarray*}


最後の行で、\sum_{j=1}^{3}を実行して成分ごとの積の和(ベクトルの内積)をとった。この結果から、ベクトル三重積の公式、

    \begin{eqnarray*}{\bf A}\times ({\bf B}\times{\bf C}) ={\bf B} ({\bf A}\cdot {\bf C}) - {\bf C} ({\bf A}\cdot {\bf B})\end{eqnarray*}


を得る。 これは「BAC-CAB則」として知られている。「バックキャブ」とでも唱えて覚える。

3.1 例:rot(rot(A))

\nabla\times(\nabla\times A)はマクスウェル方程式から波動方程式を導く過程などでよく現れる式であるが、上記の「BAC-CAB則」を用いると容易に計算できる。

    \begin{eqnarray*}\nabla\times (\nabla\times A) &=&\nabla (\nabla \cdot {\bf A}) - {\bf A}(\nabla \cdot \nabla )\\&=&\nabla (\nabla \cdot {\bf A}) - \nabla^2 {\bf A}\\&=& \nabla (\nabla \cdot {\bf A}) - \Delta{\bf A}\end{eqnarray*}

 
ここで、ラプラス演算子\Delta\equiv \nabla^2とした。


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