高校数学では、3項間漸化式の問題は特性方程式を用いて解く(2章参照)。ここでは、別解として行列の対角化を用いた解法を紹介する。以下の例題を解いてみる。
以下の漸化式を満たす数列 の一般解を求めよ。
ここで は2以上の整数で、 と は与えられているものとする。
1. 行列で漸化式を解く
1.1 行列で表現
例題の漸化式と等価な式を考える。以下のように考える。
そうすると、この連立方程式は行列
を用いて、
と表すことができる。
ここで、「一般項 を求める問題」は、「 を求める問題」に置き換わった。実際、漸化式を繰り返し使うと、
となる。結局、 が計算できれば は求めることができる。以下では固有値と固有関数を用いて対角化した後に、 を計算する。
1.2 固有値・固有関数
の固有値・固有関数を求めよう。 は2次の単位行列である。
それぞれの固有値に対して、固有関数を求める。
(i) のとき:
(ii) のとき:
1.3 対角化/行列のn-1乗
上で求めた固有関数を使って対角化する。
と定義すると、 の逆行列は、
である。この と により を対角化する。(念の為計算して対角化されていることを確認した。)
固有関数を並べた順番に、左上から固有値が並ぶように対角化される。最後の対角化行列を と置く。
このとき、
を求めるため、(*) 式の両辺を 乗する。
左辺:
右辺:
これより が計算できる。
最終的に使うのは の要素のうち と である。
1.4 一般解
がわかったので、 と をつなげることができる。
であるため、
念の為、 を代入して正しいかどうか確認しておくのがよい。
2. 特性方程式で解く(高校数学レベル)
以下では、漸化式の特性方程式で解いた解法のうちの1つを示す。
【解答】
特性方程式は であるため、
の2通りに変形できる。下の式を使う。これは公比4の等比数列であるため、
最後の行では、新たな数列 を定義した。 について以下のように変形する。
となる。 と直して、
1.4 の最後にでてきた答えと一致する。どちらの方法が簡単かはわからない。
3. まとめ
行列の対角化を使って3項間漸化式を解いてきた。行列の固有値・固有関数を求めて対角化する練習問題にちょうどいい。