電磁気学でよく目にする以下のポアソン方程式を解いていこう。 この式は偏微分方程式であり、「グリーン関数」なるもので解くことができる。
目次
1. Green関数を使った解法の概要
微分方程式をGreen関数によって解く。 その一般的な解き方の詳細と構造については、「Green関数の簡単な意味(基礎)」に書いた。 その概要は、
「微分方程式を解いてを求める」
という問題を
「Green関数の満たすべき方程式を解いてGreen関数を求める」
という問題に置き換えることである。 今の場合、
に対して、Green関数が満たすべき方程式は
である。右辺はデルタ関数。
(*)’によりが求まれば、
が(*)の解になる。
実際、(*)の左辺は
となり、右辺に一致する。
2. ポアソン方程式を解く
元々の微分方程式を直接解いてスカラーポテンシャルを求める代わりに、Green関数を求めればよいことがわかった。 ここでは以下の手順でGreen関数を求めていく。
- Green関数が満たす式を作る
- その式を解くためにフーリエ変換を利用する
- 積分するために球座標に変換する
Green関数が満たす式
まず、Green関数が満たす方程式は以下の通り。
この が分かれば、が分かることは上で述べた通りである。
解くためのフーリエ変換
式(*)”を解くためにフーリエ変換を行う。は3次元であるため、 フーリエ変換も各について行う。 (よくわからない場合は、フーリエ変換の意味はあまり考えなくて良い。とにかく定義通り計算していこう。)
今の場合、
左辺ののフーリエ変換:
右辺ののフーリエ変換:
(デルタ関数のフーリエ変換が1になることを思い出す。)
したがって、式(*)”は、
となる。
この左辺を計算していこう。まず、 は のようにに作用し、には作用しないことに注意する。
について計算する。
も同様に
以上より
となる。よって式(*)”は
被積分関数を等しいとして、
となる。これでGreen関数のフーリエ成分(成分)が求まったので、 逆フーリエ変換(式(**))により
となる。あとは最後の積分を計算してやれば良い。
積分のための球座標変換
3次元の直交座標()における積分は、以下の球座標(極座標)に変換すると計算しやすい。
である。 ベクトルの取り方は、を基準にとる(下図)。 これで内積も計算できる。
積分計算していこう。 は簡単に積分できる。の積分の後、の積分を実行する。
最後の赤字の積分はディリクレ積分として知られており、 複素積分を用いて解くことができる。
以上、Green関数を求めることができた。 結果は重要である。
【結果】ポアソン方程式の解:スカラーポテンシャル
以上より、 スカラーポテンシャルが求めることができる。
これは重要な結果である。 また、ここで扱ったGreen関数のおおまかなイメージは「Green関数の簡単な意味(基礎)」を参考にされたい。
3. よく見る具体的な形
最後に具体的な形をまとめおこう。
空間の電荷が電荷密度によって表されている場合:
原点に点電荷がある場合:
に点電荷がある場合:
異なる位置に複数の点電荷がある場合:
4. まとめ
偏微分方程式、フーリエ変換、極座標積分、ディリクレ積分、Green関数など計算は大変だったと感じる。ただ、得られた結果は重要なものである。 Green関数を使った微分方程式の解法としての練習問題にもよかろう。