ローラン展開例題シリーズその3。ここまで、ローラン展開の基本と例題 、三角関数を含んだ関数のローラン展開の例題 を扱ってきた。ここでは が真性特異点である複素関数について、ローラン展開して複素積分を求める。孤立特異点における留数を求める下の式は使えない。
次の複素関数 を
周りでローラン展開せよ。その後、それらの複素積分を求めよ。
(積分経路

1. 前提知識
真性特異点と孤立特異点
真性特異点と孤立特異点の見分け方のひとつを説明する。ある2つの複素関数 をそれぞれローラン展開した結果、下のようになったとする。
について:
の項が残るため、
は 6位の極(孤立特異点)。また、留数は
である。
について:
の部分(主要部)について、
の項は
まである。したがって、
は真性特異点である。また、留数は
である。
ざっくりした見分けとして、特異的な項が打ち切られていたら孤立特異点である。
展開まとめ
ここで使う展開式はマクローリン展開、
において として、
2. 解答
複素積分の計算の方針:
をローラン展開する
の係数
(留数)を求める
- 複素積分の値は 「
×(留数)」(留数定理)
なぜこれで求められるかは、「例題で学ぶ:ローラン展開/極/留数定理」 に書いた。(読了目安:15~30分)
以下のローラン展開の結果を見ればわかるように、例題の3つの関数は真性特異点 をもつ。
(1) f(z) = e^(1/z)
- ローラン展開:
2. の係数
(留数):
3. 複素積分の値は 「 ×(留数)」:
以下の問題も同様に複素積分が計算できる。
(2) f(z) = z^2 sin(1/z)
ローラン展開の方針: をそのまま使う。
- ローラン展開:
2. の係数
(留数):
3. 複素積分の値は 「 ×(留数)」:
(3) f(z) = z^3 e^(1/z)
ローラン展開の方針: をそのまま使う。
- ローラン展開:
2. の係数
(留数):
3. 複素積分の値は 「 ×(留数)」:
3. まとめ
真性特異点を含んだ複素積分の場合はローラン展開が重要になってくる。つまり、今回のようにローラン級数
で展開して、留数である を求めることによって複素積分の計算をおこなう。真性特異点の関係する複素積分の問題としては、三角関数や指数関数に
が入った形が多い。
ローラン展開の例題シリーズはひとまず終わりです。