【例題で学ぶ③】ローラン展開/複素積分の例題(「sin(1/z)」「e^(1/z)」など真性特異点を持つ関数型)


 ローラン展開例題シリーズその3。ここまで、ローラン展開の基本と例題 三角関数を含んだ関数のローラン展開の例題 を扱ってきた。ここでは z=0真性特異点である複素関数について、ローラン展開して複素積分を求める。孤立特異点における留数を求める下の式は使えない。

    \begin{eqnarray*} \cancel{Res[z=0,f(z)]=\frac{1}{(n-1)!}\lim_{z\to 0}\frac{d^{n-1}}{dz^{n-1}}\left[ z^n f(z)\right]} \end{eqnarray*}

例題

次の複素関数 f(z)z=0 周りでローラン展開せよ。その後、それらの複素積分を求めよ。

    \begin{eqnarray*} &&(1)\; f(z)=e^{\frac{1}{z}};\quad\oint_C e^{\frac{1}{z}} \, dz\\\\\ &&(2)\;f(z)=z^2\sin \left(\frac{1}{z}\right);\quad\oint_C z^2\sin \left(\frac{1}{z}\right) \, dz\\\\ &&(3)\;f(z)=z^3 e^{\frac{1}{z}};\quad\oint_C z^3 e^{\frac{1}{z}} \, dz \\\\ \end{eqnarray*}


(積分経路 C:|z|=1 (反時計回り)で、以下同様。)





1. 前提知識

真性特異点と孤立特異点

真性特異点と孤立特異点の見分け方のひとつを説明する。ある2つの複素関数 f(z), g(z) をそれぞれローラン展開した結果、下のようになったとする。

    \begin{eqnarray*} f(z)&=&\textcolor{blue}{\frac{4}{z^6}}+\frac{7}{z^3}+ \textcolor{red}{\frac{2}{z}}+1+2z+4z^3+\cdots\\\\ g(z)&=&\textcolor{blue}{\cdots}+ \frac{4}{z^3}+\frac{3}{z^2}+\textcolor{red}{\frac{2}{z}}+1+2z^2+z^4 \end{eqnarray*}


f(z) について:

\textcolor{blue}{1/z^6} の項が残るため、z=0 は 6位の極(孤立特異点)。また、留数は \textcolor{red}{1} である。


g(z) について:

\textcolor{blue}{\cdots} の部分(主要部)について、 1/z^n の項は n\to \infty まである。したがって、z=0真性特異点である。また、留数は \textcolor{red}{2} である。


ざっくりした見分けとして、特異的な項が打ち切られていたら孤立特異点である。



展開まとめ

ここで使う展開式はマクローリン展開、

    \begin{eqnarray*} \sin z &=& z -\frac{1}{3!}z^3 + \frac{1}{5!}z^5 -\cdots\\\\\\ e^z&=&1+z+\frac{1}{2!}z^2+\frac{1}{3!}z^3+\cdots\\\\ &=&\sum_{n=0}^\infty \frac{z^n}{n!} \end{eqnarray*}

において z\to 1/z として、

    \begin{eqnarray*} \sin \frac{1}{z} &=&\frac{1}{z} -\frac{1}{3!}\cdot\frac{1}{z^3} + \frac{1}{5!}\cdot\frac{1}{z^5} -\cdots\\\\\\ e^{\frac{1}{z}}&=&1+\frac{1}{z}+\frac{1}{2!}\cdot\frac{1}{z^2}+\frac{1}{3!}\cdot\frac{1}{z^3}+\cdots\\\\ &=&\sum_{n=0}^\infty \frac{1}{n!}\cdot\frac{1}{z^n} \end{eqnarray*}



2. 解答

 複素積分の計算の方針:

  1. f(z)ローラン展開する
  2. 1/z の係数 b_1留数)を求める
  3. 複素積分の値は 「2\pi i ×(留数)」(留数定理)

なぜこれで求められるかは、「例題で学ぶ:ローラン展開/極/留数定理」 に書いた。(読了目安:15~30分)

以下のローラン展開の結果を見ればわかるように、例題の3つの関数は真性特異点 z=0 をもつ。



(1) f(z) = e^(1/z)

  1.  ローラン展開

    \begin{eqnarray*} e^{\frac{1}{z}}&=&1+\textcolor{red}{\frac{1}{z}}+\frac{1}{2!}\cdot\frac{1}{z^2}+\frac{1}{3!}\cdot\frac{1}{z^3}+\cdots \end{eqnarray*}


 2.  1/z の係数 b_1留数): \textcolor{red}{1 }


 3.  複素積分の値は 「2\pi i ×(留数)」:

    \begin{eqnarray*} \oint_C e^{\frac{1}{z}}\, dz = 2\pi i \cdot \textcolor{red}{1} = 2\pi i\quad\blacksquare \end{eqnarray*}



以下の問題も同様に複素積分が計算できる。



(2) f(z) = z^2 sin(1/z)

ローラン展開の方針:z^2 をそのまま使う。

  1.  ローラン展開

    \begin{eqnarray*} z^2\sin \left(\frac{1}{z}\right) &=& z^2\left[\frac{1}{z} -\frac{1}{3!}\frac{1}{z^3} + \frac{1}{5!}\frac{1}{z^5} -\cdots\right]\\\\ &=&z\textcolor{red}{-\frac{1}{6}\cdot\frac{1}{z}}+\frac{1}{120}\cdot\frac{1}{z^3}-\cdots \end{eqnarray*}


 2.  1/z の係数 b_1留数): \textcolor{red}{-1/6}


 3.  複素積分の値は 「2\pi i ×(留数)」:

    \begin{eqnarray*} \oint_C z^2\sin \left(\frac{1}{z}\right)\, dz = 2\pi i \cdot \left(\textcolor{red}{-\frac{1}{6}} \right)= -\frac{\pi i}{3}\quad\blacksquare \end{eqnarray*}



(3) f(z) = z^3 e^(1/z)

ローラン展開の方針:z^3 をそのまま使う。

  1.  ローラン展開

    \begin{eqnarray*} z^3 e^{\frac{1}{z}}&=& z^3 \left[1+\frac{1}{z}+\frac{1}{2!}\cdot\frac{1}{z^2}+\frac{1}{3!}\cdot\frac{1}{z^3}+\frac{1}{4!}\cdot \frac{1}{z^4} + \frac{1}{5!}\cdot \frac{1}{z^5} +\cdots\right]\\\\ &=& z^3 + z^2 + \frac{1}{2}\,z + \frac{1}{6}+ \textcolor{red}{\frac{1}{24}\cdot \frac{1}{z}}+\frac{1}{120}\cdot \frac{1}{z^2}+\cdots  \end{eqnarray*}


 2.  1/z の係数 b_1留数): \textcolor{red}{1/24}


 3.  複素積分の値は 「2\pi i ×(留数)」:

    \begin{eqnarray*} \oint_C z^3 e^{\frac{1}{z}}\, dz = 2\pi i \cdot \textcolor{red}{\frac{1}{24}} = \frac{\pi i}{12}\quad\blacksquare \end{eqnarray*}





3. まとめ

 真性特異点を含んだ複素積分の場合はローラン展開が重要になってくる。つまり、今回のようにローラン級数

    \begin{eqnarray*} f(z)=\sum_{n=0}^\infty (z-a)^n + \sum_{n=1}^\infty \frac{b_n}{(z-a)^n} \end{eqnarray*}

で展開して、留数である b_1 を求めることによって複素積分の計算をおこなう。真性特異点の関係する複素積分の問題としては、三角関数や指数関数に 1/z が入った形が多い。

 ローラン展開の例題シリーズはひとまず終わりです。





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