1/6公式、1/12公式などパターンをまとめた。大学入試でよく使った公式である。導出は数学Ⅲの部分積分を使わず、すべて数学Ⅱの積分レベルで工夫した。
(追い詰められた人向けの格言:面積を求める穴埋め問題なら、全部 絶対値つけて正にしてしまえばよい。)
目次
1. 導出のために知っておきたいこと
2つのことだけ押さえておけば、面積の公式は導くことができる。
方程式と交点の対応
中学数学では直線と直線の交点の座標を求めるときに、方程式を解いて求めていたと思う。同じようにして、放物線(2次関数)と直線(1次関数)の交点の座標を求めたければ、方程式を解けば良い。以下の簡単な例題で学ぶ。
放物線 と 直線
の交点を求めよ。
図は以下の通りである。交点とは2つの式を満たす座標 のことであるので、連立方程式を解けばよかった。

連立方程式を解けば、2つの座標 が求めることができる。
いま、 を(直線の式)-(放物線の式)としてみる。そうすると
は以下のように、2つの交点の
座標を因数にもつ形に必ず因数分解できる。
これは非常に重要な結果である。これは直線と放物線の関係に限ったことではない。直線と3次関数の場合でも同様に、交点が3つあれば、それぞれの交点の 座標を
として、
の因数を持った関数で表すことができる。
大事な点をまとめておく。曲線は直線、放物線などを表す。
を(曲線
を表す式)-(曲線
を表す式)とすると、
は2つの曲線
,
の交点を因数にもつ形に因数分解できる
の最高次の符号に注意する(2.1以降の例で確認)。
公式を導くのに必要な積分のテクニック
1/6公式などを導くために必要な積分テクニックを書いておく。
は積分定数である。この積分のポイントは
をあたかも以下のような
の積分のように扱うことである。
を展開して積分しても良いが、手間がかかるのでまとめて積分するのが良い。これは
や
でも同じようにできる。
2. 積分公式パターン
1/6公式(2次−1次型)
定番の1/6公式である。2次関数 と1次関数
の場合を考える。係数は適当に
としている(
)。
図は下のようになる。交点の 座標を小さい方から
とした。

面積 を求めよう。面積は(上の関数)-(下の関数)を
から
まで積分すれば良い。この図では上の関数は
、下の関数は
である。したがって、面積は
ここで、1.1での内容を思い出してほしい。交点の 座標が
であるので、被積分関数は
を必ず因数にもつ。ただし、今の場合は、
の係数(
)はそのままになることに注意する。
この積分は、数学Ⅲであれば部分積分を実行すれば良いが、ここでは数学Ⅱの範囲で工夫する。うまい変形をしよう。 をはさみ込む。
この計算のコツは以下の3点である。
の変形
の積分(1.2参考)
- 2次の係数(ここでは
)に注意
ここでは2次の係数について であるため、
である。これは放物線が下に凸になっているためである。放物線が上に凸の場合(
)、面積の計算は、(放物線の式)-(直線の式)を被積分関数とすれば正しい符号で面積が導ける(
)。
このような符号を考えるのが面倒で、公式化してしまえ!ってなったのが、絶対値付き の1/6公式である。
二次関数と直線で囲まれた領域の面積 は、二次関数と直線の2つの交点の
座標を
とすると、


なぜ絶対値が必要になったか?いまいちど考えてみてほしい。ヒントは(上の関数)-(下の関数)で積分すれば必ずプラスになるということ。
1/6公式(2次−2次型①)
上に凸の放物線と下に凸の放物線で囲まれた領域の面積 を求めよう。

図のように交点の 座標を
とする。この面積を求めるときも、(上の関数
)-(下の関数
)とすればよい。
関数の差を計算すれば、因数として が出てくる。このとき
の係数に注意する。もともと2つの関数が2次関数なので、差をとった関数の
の係数は、
( の
の係数(>0))-(
の
の係数(<0))
でプラスになる。この2次の係数の差を と置いてしまえば、そのまんま「直線と放物線で囲まれた面積」の1/6公式が使える。ここでは、絶対値をとったバージョンで書いておく。
上に凸の二次関数と下に凸の二次関数で囲まれた領域の面積 は、それぞれの2次関数における2つの交点の
座標を
とすると、


1/6公式(2次−2次型②)
同じく2つの放物線で囲まれた面積である。ここでは、両方とも上に凸の場合を考えている。
ただし、2次の係数が同じ場合は囲まれた領域は存在しない(1次方程式の解が1個になる)ので、ここでは2次の係数が異なる2つの2次関数を考えている。

ここまで見てきたように(上の関数 )-(下の関数
)とすると、因数として
が出てくる。
したがって、「上に凸の放物線と下に凸の放物線で囲まれた面積」と同じ公式が使える。2次関数-2次関数型を一般化して書いておく。
の係数が異なる2つの二次関数で囲まれた領域の面積
は、それぞれの二次関数における2つの交点の
座標を
とすると、


1/12公式(3次-1次(接線)型)
三次関数と一次関数(接線)で囲まれた領域の面積 を計算する。

このパターンのポイントは以下である。
- 三次方程式なので交点が3つなら
- 「接する」=「方程式の解は重解(
は重解)」
が重解であれば、因数は
型
面積 を計算する。(上の式
)-(下の式
)で計算する。3次関数の
の係数を
とする。
いま、 としているため、
で出てきている。(上の式
)-(下の式
)で丁寧に計算しているため、面積は正ででてきた。
1/6公式を導いたときと同様に再度、計算のコツをまとめておく。
の変形
の積分(1.2参考)
- 3次の係数(ここでは
)に注意
1/12公式をまとめておく。
三次関数と直線(その三次関数の接線)で囲まれた領域の面積 は、三次関数と接線の接点(
)以外のもう1つの交点の
座標を
とすると、


1/3公式(2次-1次 接線+端区切り型)
図のように放物線の接線と 軸に垂直な直線
で囲まれた領域の面積を求めよう。

直線が接線なので、 を因数にもつ。以下に注意する。
- 二次関数の
の係数は
- 積分区間は
、
より
である。
も適用できるように、全部絶対値つけて公式化してしまう。
二次関数の における接線、および
で囲まれる領域の面積
は、
1/12公式(2次-1次-1次型)
よくある放物線と2つの接線で囲まれる領域の面積を求めたい。

このパターンでは は計算できる。
となる(
と
の中点)。
それぞれ、2つの領域(オレンジ四角・青四角)に分けた面積を足し合わせる。注意点は以下の通り。
- それぞれの領域について 1/3公式 が使える
- 二次関数の
の係数は
面積を計算する。
これもまた 1/12 公式である。
二次関数と における2つ接線で囲まれる領域の面積
は、
1/30公式(4次-1次型)
4次関数と1次関数で囲まれた領域の面積。4次関数は大学入試では滅多に出ない。

はそれぞれ重解である。
1/30公式ができる。
四次関数と の2点で接する接線とで囲まれる領域の面積
は、
その他の類似型
- 左図:三次関数と二次関数は 1/12公式
- 右図:四次関数と二次関数は 1/30公式
など、最高次の関数に注意すれば良い。

おまけ:三次関数を直線で分割した領域
おまけとして、以下の 、
の面積の和を求めたい。

計算したら計算量が多かったので別に用意した。
やってみた結果、これは公式化すべきものではない、と気づいた。ちなみに2つの領域の面積が同じになるときには、直線 は3次関数の変曲点を通る。
3. まとめ
どの公式も積分を工夫すれば容易に導くことができる(高校数学レベル)。より高次の関数の面積を求める場合は、ベータ関数を使うなどする(大学数学レベル)。
念の為、「面積を求める穴埋め問題なら、全部 絶対値つけて正にしてしまえばよい」は本当に追い詰められた人しか認められない。圧倒的な思考停止。検算する機会をも奪う悪行である。ちゃんと符号考えて、式を立てたほうが絶対に良い。
1/12公式(3次-1次(接線)型)の説明で、aは”2”次関数のx^3の係数となっています。
ありがとうございます。修正いたしました。
たぶん目次の「非表示」が「非常時」になってますよ。
こんにわさん、ありがとうございます。
変な間違いしてましたね。修正しました。
30分の1公式のまとめの表題が12分の1公式になっています。間違えてたらすみません。
助かります。修正いたしました。
ありがとうございました。