1. 解答
入試問題は各自で入手すること。答えのみ(証明は略)。
【問題1】4項間漸化式・固有値方程式
3次の正方行列の中に0が複数ある場合、行列式を求めるときはサラスの法則を使う。あるいは余因子展開を行う。
detとして、固有値を得る。固有値が間違っていないかの検算は下の関係を使うと良い。確かに となっている。
次の正方行列Aとその個の固有値に対して、
の関係がある。
(i) のとき
固有ベクトルを探す。つまり、
を満たす を探す。つまり、連立方程式を解く。が重解でなければ、下図のようにrank=3の行列に対して、のrank=2。
rank2であるので、たとえば1行目は(2行目)3-(3行目)2で作られる。だから、赤色の部分の連立方程式を解けば良い。未知数3()に対して、行列のrankは2なので、解の自由度は1である。念の為、連立方程式を書いておく。
この解の1つを見つければよい。つまり、後のために簡単な解を固有ベクトルとして選ぶのが良い。
固有ベクトルの向きは(1,-1,1)方向である。解の自由度1であるのでベクトルの大きさは任意である。問題に指定がなければ、の任意性があるので計算が簡単になる固有ベクトルを選べる。規格化された固有ベクトルを求める場合はとする。
(ii) のとき
固有ベクトルを探す。2行目、3行目の簡単な形に着目すると解の1つは容易に、(1,1,1)とわかる。それを規格化して、に対する固有ベクトルは、
となる。
(iii) のとき
固有ベクトルを探す。2行目、3行目(or 1行目)の簡単な形に着目すると解の1つは容易に、(4,2,1)とわかる。それを規格化して、に対する固有ベクトルは、
となる。
行列Aの対角化
上で得られた3つの固有ベクトルを並べて、
を作る。の逆行列 は基本行列変形 (掃き出し法)により求める。最終結果は、
なので、
である。(のチェックを忘れずに。)Bを用いて、の対角化は
のようになる。
固有値の順番に固有ベクトルを並べて行列を作ったので、の対角化により対角要素は固有値の順番に並ぶ。
4項間漸化式を行列で表す。
と置くと、行列を用いて与えられた漸化式は、
となる。左から をかけて、
となる。ここで、
である。行列 は対角行列であるので、
である。式(1.1)より、
となる。左辺の を消すために、左からをかけて、
を得る。を計算する。
使うのは3行目だけなので、その成分を示した。式(1.3)より、
となる。よって求める一般項 (は0以上の整数)は、
確かに、、、となる。
補足:行列を利用しない方法:題意に沿わないが一般項は容易に求められる。
についてと置いて、
となる。よって、
のように一般項が求められる。この問題ような特殊な4項間漸化式については、うまく変形できれば容易に一般解が求められる。
【問題2】回転体の体積・表面積
(1) まず変数分離型の微分方程式を解く。
を定数として、
を代入すると、 が求まる。
のとき、
求める円の方程式は、
であり、中心 (0,4)で半径2の円である(図は略)。
(2) 与えられた式にを代入する。
での微分係数を、 と書く。
したがって、与えられた点の接線の方程式は、
である。
(3) (4) トーラスの体積・表面積の計算はパップス=ギュルダンの定理を使うと求められる。
【問題3】フーリエ変換・δ関数
(1)
をフーリエ変換する。
第一項:
第二項:
以上より、
この関数は、回折で現れる1次元のラウエ関数と同じ形をしている。
(2) の極限を取る
のとき、
のとき、の定義より、
よって、
である。また、 軸と で囲まれる三角形の面積は、
であるので、
(3) 複素フーリエ係数を求める。
の区間をフーリエ変換すれば良い。
から、
となる。
(4) の両辺をフーリエ変換する。
証明おわり
おまけ:上のようなサンプリングは、アナログデータ の値を ごとに取り出すことに対応する。つまり、フーリエ変換によってデジタルデータに変換される。情報としてデジタルデータを受け取った側は、逆フーリエ変換すれば(ほとんど)元のデータを復元することができる。
【問題4】複素平面・複素積分
(1) 絵を描いて調べる。
図より の解は以下の通り4個ある。
複合は任意である。
丁寧に解くなら、を極形式にして解く。
複素平面における を含む方程式は絵を描くとわかりやすい。
(2) に置き換えて複素積分を利用する。
被積分関数は偶関数であるから積分区間を とした積分を計算する。
複素積分へと拡張する。積分区間は図の通り。 は(1)で求めた解である。
第一項の複素積分は実軸の上に経路をもつので、実積分として扱える。この項は の極限で式 (*) に一致する。左辺は留数定理より容易に計算できる。まず、複素関数
は領域 内に特異点 と をもつ。また、(1)で求めた解より、 は を因数にもつ。つまり、
である。したがって、
とする。
留数定理の計算がしやすい形に を変形する。
に対応する留数:
に対応する留数:
ちなみに分母の項はそれぞれ、図のようなベクトルに対応する。(のときも同様)。
したがって、留数定理より、
式の右辺の第2項を計算する。この積分は の極限において0になる。なぜなら、十分大きい に対して、であるから。よって、
したがって、式において の極限をとると
なので、
である。
(3) [準備中]
2. 総評
すごい計算量!