1次元、2次元、3次元の状態密度まとめ(考え方と計算)


 1次元(1D)、2次元(2D)、3次元(3D)の状態密度を下にまとめる。ここでは、以下の状態密度をすべて同じ考え方で求める方法を紹介する。3次元の計算に慣れている人は2章から。全くわからない場合は1章から。

状態密度まとめ

    \begin{eqnarray*} D(E)= \begin{cases} \frac{L}{2\pi}\left(\frac{2m}{\hbar^2}\right)^{\frac{1}{2}}E^{-\frac{1}{2}}\quad(1D)\\\\ \frac{L^2}{2\pi}\left(\frac{2m}{\hbar^2}\right)\quad(2D)\\\\ \frac{L^3}{2\pi}\left(\frac{2m}{\hbar^2}\right)^{\frac{3}{2}}E^{\frac{1}{2}}\quad(3D) \end{cases} \end{eqnarray*}




1. 状態数を求める考え方(初歩)

 逆空間の k 点は電子の状態を決める。パウリの排他原理より1個の k 点には↑向きスピンと↓向きスピンの2個の電子の状態が存在する。したがって、状態数を求めるためには、格子点の数を求めて2倍してやれば良い

 以下では格子点の求め方の考え方を紹介する。


格子点の数を求める

 2次元で考える。逆空間の与えられた面積に存在する格子点の数を求めるためには、与えられた面積を格子点1個が占める面積で割ってやれば良い

 これは下図のようなアナロジーからわかる。この場合、格子点の個数は木の個数に対応する。「木1本あたりの面積」が分かれば、与えられた面積に何本の木が植えてあるかは簡単にわかる(スピンを考慮する場合は地面の下にでも木を植えれば良い)。

 逆空間の場合、格子点1個あたりの面積は逆格子点と逆格子点の間隔から求めることができる。逆格子点(k点)の間隔は周期境界条件の L に対応して決められて、2\pi/L である。


 逆格子空間について上の木の絵と同じような図形を考えれば下のようになる。



必要なこと

 この考え方を使うと状態数を求めるのに必要なことは

  • どの領域の状態数を求めるか、つまり領域の面積(分子)
  • 逆格子点1個あたりの面積(分母)

である。3次元の場合では「面積」を「体積」で置き換えて考えれば良い。1次元も同様である。



2. 状態密度 D(E)

共通の考え方・手順

状態密度を求める手順は以下の通り。

  1. k\rightarrow k+dk としたときに領域の体積・面積・長さがどのように変化するか
  2. 逆格子点1個が占める体積・面積・長さ
  3. k\rightarrow k+dk に対して状態数 N\rightarrow N+dN のように変わった時、状態数の増加分 dN
  4. E(k)=\hbar^2 k^2/2m により kE に変換する(E-k変換)
  5. 状態密度 D(E)=dN(E)/dE


E-k変換(1D, 2D, 3D共通)

4. については1D,2D,3D ともに共通する。E-k の変換は自由電子のシュレディンガー方程式を用いる。例えば1Dの場合

    \begin{eqnarray*} -\frac{\hbar^2}{2m}\frac{d^2}{dx^2}\Phi(x)=E\Phi(x) \end{eqnarray*}

であり、周期境界条件を課すとエネルギー固有値は

    \begin{eqnarray*} E(k)=\frac{\hbar^2 k^2}{2m}\quad\cdots(1) \end{eqnarray*}

で与えられる。これを用いて kE に変換できる。2D、3Dも同じ形になる。 ただし、

    \begin{eqnarray*} k^2=\begin{cases} k_x^2\quad(1D)\\ k_x^2+k_y^2\quad(2D)\\ k_x^2+k_y^2+k_z^2\quad(3D) \end{cases} \end{eqnarray*}

である。式(1)から

E-kの変換(よく使う)

    \begin{eqnarray*} k^2&=&\frac{2mE}{\hbar^2}\\\\ k&=&\sqrt{\frac{2mE}{\hbar^2}}\\\\ \frac{dk}{dE}&=&\frac{1}{2}\sqrt{\frac{2m}{\hbar^2}}\cdot\frac{1}{\sqrt{E}} \rightarrow \textcolor{red}{dk=\frac{1}{2}\sqrt{\frac{2m}{\hbar^2}}\cdot\frac{dE}{\sqrt{E}}} \end{eqnarray*}

を使う(1D,2D,3D共通)。



3次元の状態密度

  1. k\rightarrow k+dk としたときに体積変化 dV(k) を求める

 上に示すように3次元の場合は球である。半径 k のときの球の体積

    \begin{eqnarray*} V(k)&=&\frac{4}{3}\pi k^3\\\\ \therefore \quad\frac{dV(k)}{dk}&=&4\pi k^2 \rightarrow \textcolor{red}{dV(k)=4\pi k^2 dk} \end{eqnarray*}


  2. 逆格子点1個が占める体積(3D)

 3次元の場合は1個の k 点が占める体積は (2\pi/L)^3 である。


  3. 状態数 N\rightarrow N+dN\quad(k\rightarrow k+dk) について状態数の増分 dN

(格子点の数)×(スピンの自由度 2):

    \begin{eqnarray*} dN&=&\frac{dV(k)}{(\frac{2\pi}{L})^3}\times 2\\\\ &=&\frac{L^3}{4\pi^2}\cdot 4\pi k^2 dk\\\\ &=& \frac{L^3}{\pi^2}k^2dk \end{eqnarray*}


  4. kE に変換

    \begin{eqnarray*} dN &=& \frac{L^3}{\pi^2}k^2dk\\\\ &=&\frac{L^3}{\pi^2}\cdot\frac{2mE}{\hbar^2}\cdot \frac{1}{2} \sqrt{\frac{2m}{\hbar^2}}\cdot\frac{dE}{\sqrt{E}}\\\\ &=&\frac{L^3}{2\pi^2}\left(\frac{2m}{\hbar^2}\right)^{\frac{3}{2}}\,\sqrt{E}dE \end{eqnarray*}


  5. 状態密度 D(E)=dN/dE

    \begin{eqnarray*} D(E)=\frac{dN}{dE}=\frac{L^3}{2\pi^2}\left(\frac{2m}{\hbar^2}\right)^{\frac{3}{2}}\,\sqrt{E}\quad\blacksquare \end{eqnarray*}

3次元の状態密度はエネルギーの1/2乗に比例する。



2次元の状態密度

  1. k\rightarrow k+dk としたときの面積変化 dS(k) を求める

 上に示すように2次元の場合は円である。半径 k のときの円の面積は

    \begin{eqnarray*} S(k)&=&\pi k^2\\\\ \therefore\quad \frac{dS(k)}{dk}&=&2\pi k \rightarrow \textcolor{red}{dS(k)=2\pi k dk} \end{eqnarray*}



  2. 逆格子点1個が占める面積(2D)

 2次元の場合は1個の k 点が占める面積は (2\pi/L)^2 である。


  3. 状態数 N\rightarrow N+dN\quad(k\rightarrow k+dk) について状態数の増分 dN

(格子点の数)×(スピンの自由度 2):

    \begin{eqnarray*} dN &=&\frac{dS(k)}{(\frac{2\pi}{L})^2}\times 2\\\\ &=&\frac{L^2}{\pi}k dk \end{eqnarray*}


  4. kE に変換

    \begin{eqnarray*} dN &=&\frac{L^2}{\pi}k dk\\\\ &=&\frac{L^2}{\pi}\cdot \sqrt{\frac{2mE}{\hbar^2}}\cdot \frac{1}{2}\sqrt{\frac{2m}{\hbar^2}}\cdot\frac{dE}{\sqrt{E}}\\\\ &=&\frac{L^2}{2\pi}\left(\frac{2m}{\hbar^2}\right)dE \end{eqnarray*}


  5. 状態密度 D(E)=dN/dE

    \begin{eqnarray*} D(E)=\frac{dN}{dE}=\frac{L^2}{2\pi}\left(\frac{2m}{\hbar^2}\right)\quad\blacksquare \end{eqnarray*}

2次元の状態密度はエネルギーに依存しない定数である。



1次元の状態密度

  1. k\rightarrow k+dk としたときに線分の長さの変化は、すなわちdk である(下図)。

  2. 逆格子点1個が占める体積(1D)

 1次元の場合は1個の k 点が占める線分の長さは k 点の間隔に等しく \textcolor{red}{(2\pi/L)} である。


  3. 状態数 N\rightarrow N+dN\quad(k\rightarrow k+dk) について状態数の増分 dN

(格子点の数)×(スピンの自由度 2):

    \begin{eqnarray*} dN=\frac{dk}{\frac{2\pi}{L}}\times 2=\frac{L}{\pi}dk \end{eqnarray*}


  4. kE に変換

    \begin{eqnarray*} dN=\frac{L}{\pi}\cdot\frac{1}{2}\sqrt{\frac{2m}{\hbar^2}} \,\frac{dE}{\sqrt{E}} \end{eqnarray*}


  5. 状態密度 D(E)=dN/dE

    \begin{eqnarray*} D(E)=\frac{dN}{dE}= \frac{L}{2\pi}\left(\frac{2m}{\hbar^2}\right)^{\frac{1}{2}}\frac{1}{\sqrt{E}} \quad\blacksquare \end{eqnarray*}

1次元の状態密度はエネルギーの -1/2乗に比例する。



3. まとめ

 結果を再度まとめておく。

状態密度まとめ

    \begin{eqnarray*} D(E)= \begin{cases} \frac{L}{2\pi}\left(\frac{2m}{\hbar^2}\right)^{\frac{1}{2}}E^{-\frac{1}{2}}\quad(1D)\\\\ \frac{L^2}{2\pi}\left(\frac{2m}{\hbar^2}\right)\quad(2D)\\\\ \frac{L^3}{2\pi}\left(\frac{2m}{\hbar^2}\right)^{\frac{3}{2}}E^{\frac{1}{2}}\quad(3D) \end{cases} \end{eqnarray*}


 次元に関わらず同じ考え方で状態密度を求めることができた。混乱せずに計算するためには N(E) なのか N(k) なのかを常に意識して計算すれば良い。それぞれの項は分散関係 E(k) を通して k\leftrightarrow E と変数変換することができる。

※ここで求めた状態密度は k が十分大きい場合の状態密度である。そうでないと k の増分を連続的に dk として扱うことができない。なぜなら、実際には逆格子点は離散的であるためである。しかし、ここでは「逆格子点がほぼ連続な k の大きいところ」を暗に仮定した。




5件のコメント

  1. 川島

    初めまして。
    3次元の状態密度の導出で、(2π/L)*3が、L*3/4π*2になるのかが分かりません。
    4πk*2を作る為でしょうか?

    返信
    • batapara

      dV(k) を除いた、(2π/L)^3の逆数 と スピンの自由度の×2 を演算しています。L^3/(4π^2) になるはずです。
      ここの部分、πが2乗なんですが、πの1乗になっていたので修正しました。これで混乱させてしまっていたら申し訳ないです。

      別件ですが、最後の係数も L^3/4π^2 になっていたところもL^3/2π^2 なので修正しました。ごめんなさい。

      返信
  2. 川島

    修正ありがとうございます。
    お陰で納得出来ました。
    これからも、楽しみにしてます。

    返信
  3. 川島

    失礼ながら、2次元の状態密度もL*2/2πではなくL*2/πではないでしょうか?
    僕が間違えていたら申し訳ありませんが、確認をお願いします。

    返信
    • batapara

      ご指摘ありがとうございます。その通りです。
      一通り係数を確認して修正しました。

      返信

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