サイクロトロン共鳴周波数・振動数


 運動する荷電粒子(電子など)は磁場中でローレンツ力を受けるため、結晶に一様な磁場をかけてやると電子は、散乱を無視すれば円運動する。この円運動の周波数と同じ周波数をもつ高周波の電磁波を照射すれば、共鳴がおこり電磁波は吸収される。 これをサイクロトロン共鳴といい、この現象により有効質量を知ることができる。

一様磁場中の電子の運動方程式

 1つの電子に対して磁場を印加したときの運動が円運動になることを運動方程式から見ていく。

電場がなく、一様磁場を印加した時の電子の運動を考える。 磁場 {\bf B} の方向を z 方向にする。

    \begin{eqnarray*} {\bf B}=\left(\begin{array}{c} 0 \\ 0 \\ B \end{array}\right) \end{eqnarray*}

電荷 -e の電子は {\bf v} で運動しているとき、 磁場によりローレンツ力 {\bf f}=-e{\bf v}\times {\bf B} を受ける。 このとき運動方程式は、電子の有効質量を m^* として、

    \begin{eqnarray*} &&m^* \frac{d{\bf v}}{dt}={\bf f}=-e{\bf v}\times {\bf B}\\ \Leftrightarrow&&\frac{d}{dt}\left(\begin{array}{c} v_x\\ v_y\\ v_z \end{array}\right)=-\frac{e}{m^*} \left(\begin{array}{c} v_x \\ v_y \\ v_z \end{array}\right)\times \left(\begin{array}{c} 0 \\0\\ B \end{array}\right) = -\frac{eB}{m^*} \left(\begin{array}{c} v_y \\ -v_x \\ 0 \end{array}\right) \end{eqnarray*}



z 成分について

    \begin{eqnarray*} \frac{d v_z}{dt}=0 \end{eqnarray*}


より、v_z は一定であり、z 方向(磁場と平行な方向)には等速運動をする。これはローレンツ力が運動の方向 {\bf v} と垂直な方向に働いているからである。

x,y 成分については、

    \begin{eqnarray*} \omega_{\rm c}=\frac{eB}{m^*} \end{eqnarray*}


と置いて、

    \begin{eqnarray*} \begin{cases} \frac{d v_x}{dt}=\omega_{\rm c} v_y\\ \frac{d v_y}{dt}=-\omega_{\rm c} v_x \end{cases} \end{eqnarray*}


である。(上の式)+i(下の式)より、

    \begin{eqnarray*} \frac{d}{dt}(v_x+iv_y)&=&\omega_{\rm c} (v_y-iv_x)\\ &=&-i\omega_{\rm c} (v_x+iv_y)\\ \therefore \quad v_x+iv_y&=&v_0\exp\left( -i\omega_{\rm c} t \right)\\ &=&v_0\left(\cos\omega_{\rm c} t -i\sin  \omega_{\rm c} t\right) \end{eqnarray*}


となる(積分定数などは適当にとる)。両辺の実部・虚部を比較して、

    \begin{eqnarray*} \frac{dx}{dt}=v_x&=&v_0\cos \omega_{\rm c} t\\ \frac{dy}{dt}=v_y&=&-v_0\sin  \omega_{\rm c} t \end{eqnarray*}


より、

    \begin{eqnarray*} x&=&\frac{v_0}{\omega_{\rm c}}\sin  \omega_{\rm c} t\\ y&=&\frac{v_0}{\omega_{\rm c}}\cos \omega_{\rm c} t \end{eqnarray*}


となる。これは

    \begin{eqnarray*} x^2 + y^2 =\left(\frac{v_0}{\omega_{\rm c}}\right)^2 =r_0 \quad(v_0=\omega_{\rm c} r) \end{eqnarray*}


であり、半径を r_0 とする円運動の軌跡である。 ここで現れた \omega_{\rm c} がサイクロトロン共鳴周波数である。

運動を x,y 平面へ射影すると円運動になるが、z 方向に初速がある場合は螺旋運動になる。

これは1つの電子に対する運動である。これだけ見ると結晶の上面に電子が集まってしまうように見えるが、実際には散乱により +z方向に集まるわけではない。

サイクロトロン共鳴周波数・振動数

ポイント


    \begin{eqnarray*} \omega_{\rm c}=\frac{eB}{m^*} \end{eqnarray*}


はじめから円運動と分かっている場合、遠心力とローレンツ力による向心力との釣り合い(下図)から、

    \begin{eqnarray*} m^*r\omega^2&=&evB\\ \frac{m^*v^2}{r}&=&evB\\ v&=&\frac{erB}{m^*} \end{eqnarray*}


である。

速度vと角速度\omegaの関係から

    \begin{eqnarray*} v=\omega r \quad \Leftrightarrow \quad  \omega_{\rm c}\equiv\omega=\frac{eB}{m^*} \end{eqnarray*}


となる。\omega_{\rm c}サイクロトロン角周波数と呼ぶ。

円運動の周期 T_{\rm c}

    \begin{eqnarray*} T_{\rm c}=\frac{2\pi}{\omega_{\rm c}}=\frac{2\pi m^*}{eB} \end{eqnarray*}


であり、円運動の半径 r と電子の速度 {\bf v} に依存せず、磁場の大きさと有効質量にのみ依存する。

また、サイクロトロン振動数 f_{\rm c}

    \begin{eqnarray*} f_{\rm c}&=&\frac{1}{T_{\rm c}}=\frac{\omega_{\rm c}}{2\pi}\\ &=&\frac{eB}{2\pi m^*}\quad\blacksquare \end{eqnarray*}


となる。

磁束密度 B=1 [{\rm G}]=10^{-4}\, [{\rm T}], m^*=0.1m_0, 電子の静止質量 m_0=9.11\times 10^{-31} [kg]のとき、サイクロトロン角周波数 \omega_{\rm c}=1.76\times 10^8 [rad\,{\rm s}^{-1}], サイクロトロン振動数 f_{\rm c}=2.80\times 10^7 [Hz] である。

\omega_{\rm c} と同じ周波数の高周波電磁波を結晶に照射すれば、共鳴現象によって電磁波は吸収される。電磁波の周波数を変えていき、吸収強度を測定することで \omega_{\rm c} を求めることができる。磁束密度 {\bf B} は既知であるから、有効質量 m^* を求めることができる



(以下二つの脚注は、螺旋運動に関する駄文)

* ここで描いた螺旋運動に関連して、「魔貫光殺砲 ローレンツ力」で検索かけたが、あまり収穫はなかった。 一応、英語でも調べてみたが特に見つからなかった(魔貫光殺砲の英語が “Special Beam Cannon” であることを知ったのは大きな収穫である。他の英名はいい感じの名前だったので、人に話すときは3段落ちにすると言いかもしれない。)

** 葉緑素を取り込んで光合成ができるウミウシがいるので、緑色のピッコロも光合成できるのではないか、と思ったけどそんな設定はないらしい。知恵袋にそういう質問があったので紹介しておく 。



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