複素積分の応用例として、以下の実積分を複素積分で解く。ちなみにこの実積分は講義積分で、 とすれば容易に解ける。
複素積分の例題
以下の実積分を複素積分を用いて解け(積分経路は少し下に与えた)。
1. 複素積分の積分経路
積分経路は往々にして与えられる。今回の場合は以下の経路である。
赤線の経路 上で であり、例題の実積分に対応する。半円の半径は として、図の矢印の向きに複素積分を実行する。
2. 解答
複素関数を
とおく。複素平面全体で特異点は である( は を除いて複素平面全体で正則である。)
上の積分経路より、
になる。
C1上の積分
は実軸の上にあるため、 である。したがって、
最後に、 とすれば例題の積分に対応する。
C2上の積分
の点は
と置ける。また、
である。実際に積分を具体的に書いてみる。
直接計算するのが難しいため、 のときの収束性を調べる。積分の絶対値をとって調べる(評価する)。このときのポイントは下の通り。
- : は複素平面上の単位円を表す
- :複素平面上で大きさ1
- :積分の線素
- :が1より十分大きいため
積分の絶対値(丁寧に):
したがって、
結局、青色の積分経路 についての複素積分は で 0になる。
周回積分と留数定理
を計算する。積分経路 の中に特異点として を含む。したがって、特異点 の留数を として留数定理より、
留数を求める:
これより、
結果をまとめて実積分値を求める
上の3つの積分の結果をまとめる。 において、
より、
3. まとめ
積分経路を工夫することで、実積分を複素積分を使って求めることができる。複素積分の問題傾向をまとめとる以下の通りである。
- 院試問題や定期試験のとき積分経路はだいたい与えられている
- で円弧部分の積分はだいたい 0 に収束する
- 特異点が経路内にあるか調べる。ある場合は留数定理を使う。
この問題は 使った方が早いが、複素積分の練習問題には良い。