【複素積分】f(x)=1/(1+x^2)の実積分(-∞,∞)


 複素積分の応用例として、以下の実積分を複素積分で解く。ちなみにこの実積分は講義積分で、 [\arctan{x}]_{-\infty}^{\infty} とすれば容易に解ける。

複素積分の例題

以下の実積分を複素積分を用いて解け(積分経路は少し下に与えた)。


    \begin{eqnarray*} \int_{-\infty}^{\infty} \frac{dx}{1+x^2} \end{eqnarray*}





1. 複素積分の積分経路

 積分経路は往々にして与えられる。今回の場合は以下の経路である。

 赤線の経路 \textcolor{red}{C_1} 上で z=x であり、例題の実積分に対応する。半円の半径は R として、図の矢印の向きに複素積分を実行する。



2. 解答

 複素関数を

    \begin{eqnarray*} f(z)=\frac{1}{1+z^2}=\frac{1}{(z+i)(z-i)} \end{eqnarray*}

とおく。複素平面全体で特異点z=\pm である( f(z)z=\pm i を除いて複素平面全体で正則である。)

上の積分経路より、

    \begin{eqnarray*} \oint_{\textcolor{red}{C_1}+\textcolor{blue}{C_2}} f(z)\,dz=\int_{\textcolor{red}{C_1}} f(z)\,dz + \int_{\textcolor{blue}{C_2}} f(z) \,dz \end{eqnarray*}

になる。


C1上の積分

 \textcolor{red}{C_1} は実軸の上にあるため、z=x である。したがって、

    \begin{eqnarray*} \int_{\textcolor{red}{C_1}} f(z)\,dz= \int_{\textcolor{red}{C_1}} \frac{dz}{1+z^2}= \int_{-R}^{R} \frac{dx}{1+x^2} \;(\because z=x \;${\rm on}\;C_1) \end{eqnarray*}

 最後に、R\to\infty とすれば例題の積分に対応する。


C2上の積分

 \textcolor{blue}{C_2} の点は

    \begin{eqnarray*} z=Re^{i\theta},\; \theta:0\to\pi \end{eqnarray*}

と置ける。また、

    \begin{eqnarray*} dz=iRe^{i\theta}d\theta \end{eqnarray*}

である。実際に積分を具体的に書いてみる。

    \begin{eqnarray*} \int_{\textcolor{blue}{C_2}} \frac{dz}{1+z^2}\\  &=& \int_{0}^{\pi} \frac{iRe^{i\theta}}{1+R^2e^{2i\theta}}d\theta \end{eqnarray*}

直接計算するのが難しいため、R\to\infty のときの収束性を調べる。積分の絶対値をとって調べる(評価する)。このときのポイントは下の通り。

  • |e^{i\theta}|=1e^{i\theta} は複素平面上の単位円を表す
  • |i|= 1:複素平面上で大きさ1
  • |d\theta|=d\theta:積分の線素
  • |1+R^2e^{2i\theta}|\to |R^2| \,( R\to \infty)Rが1より十分大きいため
  • |\int f(z)dz|\leq \int|f(z)|dz

積分の絶対値(丁寧に):

    \begin{eqnarray*} \left|\int_{0}^{\pi} \frac{iRe^{i\theta}}{1+R^2e^{2i\theta}}d\theta \right|&\leq& \int_{0}^{\pi}\left|\frac{iRe^{i\theta}}{1+R^2e^{2i\theta}} \right|d\theta\\\\ &=& \int_{0}^{\pi}\left|\frac{R}{1+R^2e^{2i\theta}}\right|d\theta \\\\ &\leq& \int_{0}^{\pi}\left|\frac{R}{R^2e^{2i\theta}}\right|d\theta \;(\because 1<<R)\\\\ &=& \int_{0}^{\pi}\left|\frac{R}{R^2}\right|d\theta \\\\ &=& \left|\frac{1}{R}\right|\pi\\\\ &\to& 0 \quad(R\to\infty) \end{eqnarray*}

したがって、

    \begin{eqnarray*} \int_{\textcolor{blue}{C_2}} \frac{dz}{1+z^2} \to 0 \;(R\to\infty) \end{eqnarray*}

 結局、青色の積分経路 C_2 についての複素積分は R\to\infty で 0になる。



周回積分と留数定理

    \begin{eqnarray*} \oint_{\textcolor{red}{C_1}+\textcolor{blue}{C_2}} f(z)\,dz \end{eqnarray*}

を計算する。積分経路 C_1+C_2 の中に特異点として z=i を含む。したがって、特異点 z=i の留数を {\rm Res}_{z=i}f(z) として留数定理より、

    \begin{eqnarray*} \oint_{\textcolor{red}{C_1}+\textcolor{blue}{C_2}} f(z)\,dz &=& 2\pi i {\rm Res}_{z=i}f(z) \end{eqnarray*}

留数を求める:

    \begin{eqnarray*} {\rm Res}_{z=i}f(z)&=& \lim_{z\to i}(z-i)f(z) \\ \\ &=& \lim_{z\to i}\frac{1}{z+i} \\ \\ &=& \frac{1}{2i} \end{eqnarray*}

これより、

    \begin{eqnarray*} \oint_{\textcolor{red}{C_1}+\textcolor{blue}{C_2}} f(z)\,dz = 2\pi i \cdot\frac{1}{2i} = \pi \end{eqnarray*}



結果をまとめて実積分値を求める

 上の3つの積分の結果をまとめる。R\to\infty において、

    \begin{eqnarray*} \oint_{\textcolor{red}{C_1}+\textcolor{blue}{C_2}} f(z)\,dz&=&\int_{\textcolor{red}{C_1}} f(z)\,dz + \int_{\textcolor{blue}{C_2}} f(z) \,dz \\ \\ \\ \pi&=& \lim_{R\to\infty}\int_{-R}^{R} \frac{dx}{1+x^2}  + 0 \end{eqnarray*}

より、

    \begin{eqnarray*} \int_{-\infty}^{\infty} \frac{dx}{1+x^2} = \pi \quad \blacksquare \end{eqnarray*}



3. まとめ

 積分経路を工夫することで、実積分を複素積分を使って求めることができる。複素積分の問題傾向をまとめとる以下の通りである。

  • 院試問題や定期試験のとき積分経路はだいたい与えられている
  • R\to\infty で円弧部分の積分はだいたい 0 に収束する
  • 特異点が経路内にあるか調べる。ある場合は留数定理を使う。

この問題は arctan 使った方が早いが、複素積分の練習問題には良い。




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