ランジュバン関数の導出時には原子の磁気モーメントはあらゆる方向 を向いていた。ブリルアン関数を導出するときは、量子化されて飛び飛びの値をとる全角運動量 による磁気モーメントを考える。
- ランジュバン関数 ← あらゆる方向の磁気モーメント
- ブリルアン関数 ← 量子化された磁気モーメント
以下の説明において、Feなどの 遷移金属の場合は軌道角運動量の消失によりを全スピン角運動量 で置き換えて良い。
1. 基礎知識
ブリルアン関数導出のための基礎知識は以下の通り。
2. ブリルアン関数の導出
仮定:
- 相互作用のない孤立磁気モーメントの集団
- それぞれの原子は一定の磁気モーメント をもつ
- の方向は角運動量 によって量子化
- 磁気モーメントを で表す:
の孤立磁気モーメントの集団に、外部から 方向に磁場 をかける。このとき、外部の磁場ベクトルと磁気モーメントのベクトルとの相互作用(エネルギー)は、
となる。 はランデの 因子、 はボーア磁子、 は の 成分。
統計力学ではエネルギー をもつ状態にある確率は、以下のボルツマン因子に比例する。
これは相対確率であり、確率の規格化のため分配関数 で割る必要がある。つまり取りうるすべての についての確率を総和したもので割る。ここで、 は
の 個あるため、 の状態を取りうる確率は
となる。考えている原子数を とすると、 方向の磁気モーメントの大きさ は の期待値、
となる。ここで、 とおく。
分母:
3つ目の は等比数列の和の公式:
について、公比 である。また、
である。赤色で強調されている部分は を作るための変形である。
分子 :
である。
したがって、
である。また、最後の行で ブリルアン関数 を定義した。
は、磁気モーメントの値が連続だと仮定するランジュバン関数に一致する。
また、 が小さい時、
と展開できる。このとき、
で、帯磁率が温度の逆数に比例する Curieの法則を得る。
3. まとめ
は全角運動量であるが、軌道角運動量 が無視できる場合は、 として良い。このとき、 となる。
ランジュバン関数より計算は大変である。