演算子が指数関数の肩に乗っていることがある。実は指数関数の展開により簡単に表されることを学び、ここでは、量子統計力学で重要となる以下の式を示そう。 はハミルトニアンを表す。 はハミルトニアンの固有値エネルギーを表している。
分配関数とトレース(Tr)の関係【統計量子力学】
1. 1つ目の等号
一つ目の等号については、分配関数 で状態和を表す。分配関数の意味がわからない場合は、以下の記事を参考にすると良い。
2. 2つ目の等号
とくにここでは二つ目の等号について証明していく。
を示す。あるユニタリ行列 により ハミルトニアン が対角化されるとする。すなわち、
のように対角要素にエネルギー固有値 が並ぶ。ここで行列の次元は無限次元であるとする( 次元であっても証明は変わらない。)対角化行列 に対して、
2.1 指数関数の展開
を展開する。
のように展開できる。
指数関数の肩に演算子がある場合の展開
実数関数の 指数関数(exponential function)の展開
と同様に、演算子 に対して、
と展開できる。
ここで、
であるので、両辺のトレース(Tr)をとることで
である。最後にトレースの巡回性、
により、 として、
となる。
分配関数とトレース
3. まとめ
この式は重要なので覚えておく。
[U,H]=0は誤りではないでしょうか。
これが正しいとすると、
P=U^{-1} HU=U ^{-1} UH=H,
となるので、ハミルトニアンHを初めから対角化された基底で考えていることになります。このとき、Uは恒等演算子(単位行列)になります。
Tr(U^{-1}e^{-\beta H} U)=Tr(e^{-\beta H})
はトレースの巡回性
Tr(AB)=Tr(BA),
より得られます。
失礼いたしました。勝手に交換すると仮定してしまいました。
ご指摘ありがとうございます。