【インドの魔術師】ラマヌジャンの見つけたクールな式【11式】


Srinivasa Ramanujan - OPC - 1
creofire.com (archived from the original) [Public domain], via Wikimedia Commons

 インド生まれの数学者ラマヌジャンが見つけたクールな式を紹介する。目次の \square には複雑な式が入ります。一通り記事を読んでから、\square を穴埋め形式で使えるようにしています。ご活用ください(これは悪ふざけです)。

1. ラマヌジャンって?

 シュリニヴァーサ・ラマヌジャン(Srinivasa Ramanujan)は偉大な数学者である。1887年に生まれて、32歳という若さで亡くなったものの、その生涯に数えきれない功績を残している。

 本記事では、連分数や円周率 \pi の近似式の計算に長けた、「インドの魔術師」ラマヌジャンの見つけた式を紹介しよう。

2 分数・整数を忘れたら使う式

 分数やら整数やら値がわからなくなった!というときに使えるかもしれない式です。私は覚えている派なので使ったことはないです。

2.1 □=1/2

 もし、\frac{1}{2} が何かわからなくなったり、失われたときには以下の式を使うといいでしょう。

1/2が知りたいときに使う式

 

    \begin{eqnarray*}\sqrt{1-\sqrt{1-\frac{1}{2}\sqrt{1-\frac{1}{4}\sqrt{1-\frac{1}{8}\sqrt{1-\cdots}}}}}=\frac{1}{2}\end{eqnarray*}

 根号(ルート)が入れ子になっています。どこからこの式は来たのでしょう?

2.2 □=5/2

 上のように、\frac{1}{2} を忘れる方はいませんね。もうちょっと複雑に行きましょう。 もし、\frac{5}{2} が何かわからなくなったら以下の式を使うといいでしょう。

5/2が知りたいときに使う式

 

    \begin{eqnarray*}\prod_{p}^{\infty}\left(\frac{p^2+1}{p^2-1}\right)=\frac{5}{2}\end{eqnarray*}

pは素数、\prodは総乗を表します。つまり、

    \begin{eqnarray*}\left(\frac{2^2+1}{2^2-1}\right)\left(\frac{3^2+1}{3^2-1}\right)\left(\frac{5^2+1}{5^2-1}\right)\left(\frac{7^2+1}{7^2-1}\right)\left(\frac{11^2+1}{11^2-1}\right)\cdots=\frac{5}{2}\end{eqnarray*}


と表すことができる。らしい。わかりやすいので、何項までが具体的に計算できそうです。

2.3 □=-2

 中学生になると「負の数」を習います。理解できない学生がいたらそっと下の式を教えてあげましょう。

中学生もビックリの式

 

    \begin{eqnarray*}\sqrt[3]{-6+\sqrt[3]{-6+\sqrt[3]{-6+\sqrt[3]{-6+\cdots}}}}=-2\end{eqnarray*}

 でもやっぱり立方根は難しいでしょうか?

2.4 □=3

 そんなあなたに根号で表された式です。

世界のナベアツが喜ぶ式

 

    \begin{eqnarray*}\sqrt{ 1 + 2\sqrt{1+3\sqrt{1+4\sqrt{1+\cdots }}} } =3\end{eqnarray*}

次からは超越数が入るので難しいです。

3. 連分数による公式、ネイピア数 e 関連

 連分数による公式を紹介します。余談ですが、連分数はノートに手書きで書くと式のバランスがとりにくいです。e 関連の式が多いです。

3.1 □=1/(e-1)

 右辺は分数だらけの連分数ですが、eを使って綺麗に表現できます。逆かもしれない。左辺が超越数だけど、右辺のように自然数で表すことができるほうが綺麗かもしれない。

何かの機会に使う式

 

    \begin{eqnarray*}\frac{1}{1+\frac{2}{2+\frac{3}{3+\frac{4}{4+\cdots}}}}=\frac{1}{e-1}\end{eqnarray*}

3.2 □=exp(π-1)/exp(π+1)

Euler’s identity e^{i\pi}+1=0 みたいな形が現れる式。Eulerが好きそうな式でもある。

オイラーライクな式

 

    \begin{eqnarray*}\frac{\pi}{2+\frac{\pi^2}{6+\frac{\pi^2}{10+\frac{\pi^2}{14+\cdots}}}}=\frac{e^{\pi}-1}{e^{\pi}+1}\end{eqnarray*}

これは一般化もできる。

オイラー感の抜けた式

 

    \begin{eqnarray*}\frac{x}{2+\frac{x^2}{6+\frac{x^2}{10+\frac{x^2}{14+\cdots}}}}=\frac{e^{x}-1}{e^{x}+1}\end{eqnarray*}

 いろんな値を x に代入して楽しむことができる式である。

3.3 □=√(πe/2)

 長い旅路の末、2つの超越数に結びつく衝撃的な結果となる。

国境の長いトンネルを抜けると超越数の根号だった。

 

    \begin{eqnarray*}1&+&\frac{1}{1\cdot 3}+\frac{1}{1\cdot 3\cdot 5}+\frac{1}{1\cdot 3\cdot 5\cdot 7}\\&+&\frac{1}{1\cdot 3\cdot 5\cdot 7 \cdot 9} +\cdots +\frac{1}{1+\frac{1}{1+\frac{2}{1+\frac{3}{1+\frac{4}{1+\cdots}}}}}=\sqrt{\frac{\pi e}{2}}\end{eqnarray*}

 左辺の無限級数と連分数が、よく知られた \pie で表されるとは驚きである。

4. 円周率 π 関連

 \pi は古代より近似値が求められてきた。 ラマヌジャンもその例にもれずいろいろな \pi に関する式を発表している。

4.1 □≒π

 近似精度は悪いだろうが、今まで以上に計算しやすい式である。

\piを近似式であらわしてみた

 

    \begin{eqnarray*}\pi \fallingdotseq \frac{99^2}{2206\sqrt{2}}\end{eqnarray*}

この式は8桁目まで正しい。

4.2 □=2/π

 分母に \pi があってもラマヌジャンには関係ない。

クールな式

 

    \begin{eqnarray*}1-5\left(\frac{1}{2}\right)^3+9\left(\frac{1\cdot 3}{2\cdot 4}\right)^3-13\left(\frac{1\cdot 3\cdot 5}{2\cdot 4\cdot 6}\right)^3 + \cdots = \frac{2}{\pi}\end{eqnarray*}

 次からはもっと激しい式を。

4.3 □=1/π (その1)

 無限級数で表された \pi の驚愕の表現。

中ボス感

 

    \begin{eqnarray*}\frac{1}{\pi}=\frac{2\sqrt{2}}{9801}\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(4n)!(1103+26390n)}{(n!)^4 396^{4n}}\end{eqnarray*}

 1103+26390n に何か秘訣が?

4.4 □=1/π (その2)

 最後に、二重階乗を使った見栄えがいい公式を紹介する。

圧倒的ラスボス感

 

    \begin{eqnarray*}\frac{1}{\pi}=\sqrt{8}\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(1103+26390n)(2n-1)!!(4n-1)!!}{99^{4n+2}32^n(n!)^3}\end{eqnarray*}

 やっぱり、1103+26390n に何か秘訣が?数式ですらエクスクラメーション。

5. おまけ:タクシー数

    \begin{eqnarray*}1729=1^3+12^3 =9^3 + 10^3\end{eqnarray*}

 1729はタクシー数と呼ばれる。公式ではないが、ラマヌジャンの逸話として有名なので紹介しておく。ラマヌジャンの指導教官である、ハロルド・ハーディとの逸話は以下の通りである。

 1918年2月ごろ、ラマヌジャンは療養所に入っており、見舞いに来たハーディは次のようなことを言った。
「乗ってきたタクシーのナンバーは1729だった。さして特徴のない数字だったよ」

 これを聞いたラマヌジャンは、すぐさま次のように言った。
「そんなことはありません。とても興味深い数字です。それは2通りの2つの立方数の和で表せる最小の数です」

実は、1729は次のように表すことができる。

    \begin{eqnarray*}1729=1^3+12^3 =9^3 + 10^3\end{eqnarray*}

 すなわち、1729が「A = B^3 + C^3 = D^3 + E^3」という形で表すことのできる数 A のうち最小のものであることを、ラマヌジャンは即座に指摘したのである。

 このエピソードに見られるように、ラマヌジャンは直感的なひらめきに優れていますね。

6. まとめ

 公式を通して、ラマヌジャンの常人離れしたすごさが見えたと思います。公式マスターを目指すためには、目次に戻って穴埋めを活用しましょう。今後、他にもおもしろい公式があったらまとめていきたいです。


 お読みいただきありがとうございました。

7. 参考

 ラマヌジャン以外にも面白い話が載っている本。


4件のコメント

  1. 奥村セルジュ

    4.3の式のシグマが間違っています。kの無限級数ではなくて、nの無限級数です。

    数学慣れしている人なら、「あ、ただの書き間違いかなー?」でスルーできる部分ではあるんですけどね。。。 

    少しでも多くの人にこんなスゲー数学者がいたことを知ってもらえることはとても大事なことだと思います。このようなページを設けてくださってありがとうございます!

    (一般の理系大学生より)

    返信
    • batapara

      ありがとうございます、大助かりです。

      神秘的な人物なので興味深いと思いますし、式を眺めてるだけでもワクワクすると思います。
      レジェンド数学者なので皆さまに知ってもらいたく、まとめた次第です。

      返信

  2. 2.2項の例示、合ってますか…?
    この例えだと、答えは1になりませんか

    返信
    • batapara

      すみません。このままだと左辺はちょうど1になります。
      分母はマイナスでしたので、修正いたしました。
      ご指摘ありがとうございます。

      返信

コメントをキャンセル コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。